東京学芸大学「学びと遊びの歴史」を翻刻!

コレクション: 学校教材発掘プロジェクト8

新板絵入伊勢物語 2巻 - 翻刻

新板絵入伊勢物語 2巻 - ページ 14

ページ: 14

翻刻

【右丁】 いにしへよりも。あはれにてなんかよひける 「廿三」むかし。ゐなかわたらひしける人の子ども井のもとに出てあそひ けるをおとなに成にけれは男女もはぢかはして有ければ男は此女 をこそえめと思ふ女は此おとこをと思ひつゝ。おやのあはすれどもき かでなん有ける。扨となるの男のもとよりかくなん  つゝゐづゝ井筒(いつゝ)にかけしまろがたけ過(すき)にけらしないもみさるまに 《送り仮名:かへし》くらへこしふりわけがみもかた過ぬ春ならずしてたれがあぐべき など。いひ〳〵て。うゐにほいのごとくあひにけり。としころふる程に。女おや なくたよりなく成まゝに。もろともにいふかひなくてあらんやはとてかうち の国たかやすのこほりに。いきかよふ所出きにけり。さりけれど 此もとの女。あしと思へるけしきもなくて。やりければ。男こと心有 て。かゝるにやあらんと思うたがひて。せんざいの中にかくれゐてかう ちへいぬるがほにてみれば。此女いとようけさうじて。うちながめて 【左丁】 《送り仮名:古今》風ふけばおきつしらなみたつた山よはにや君がひとりこゆらん と。よみけるを聞て。かぎりなくかなしと思ひてかうちへもゆかず成 にくり。まれ〳〵にかのたかやすにきてみれば。はじめこそ心にてもつ くりけれ。今はうちとけて。手づからいいふがひ取て。けごのうつは物にもり けるをみて。心うかりていかず成にけり。さりけれは。かの女 大和(やまと)の方を見やりて 《送り仮名:新古今》君があたり見つゝおらんいこま山くもなかくしそあめはふるとも と。いひて見いだすにからうじて。やまと人こんといへり。よろこびて まつにたび〳〵すぎぬれば 《送り仮名:古今》君こんといひし夜ごとに過ぬればたのまぬ物のこひつゝそ□【ふ】る と。いひけれど。をとこすまずなりにけり