東京学芸大学「学びと遊びの歴史」を翻刻!

コレクション: 学校教材発掘プロジェクト8

新板絵入伊勢物語 2巻 - 翻刻

新板絵入伊勢物語 2巻 - ページ 6

ページ: 6

翻刻

【右丁】 とよみで。夜のほの〳〵とあくるに。なく〳〵かへりにけり ㊄むかし。男有けり。ひんがしの五条わたりに。いとしのびていきけり。 みそかなる所なれば。かどよりもえいらで。わらはべのふみあけたる。ついぢの くづれより。かよひけり。人しげくもあらねど。たびかさなりければ。あるじ きゝ付て。其かよひぢに。夜(よ)ごとに人をすへて。まもらせければ。いけど もえあはて。かへりけり。さてよめる 《送り仮名:古今》人しれぬわがかよひぢのせきもりはよひ〳〵ごとにうちもねなゝん と。よめりければ。いといたう。心やみけり。あるじゆるしてげり。二条の后(きさき)に。 忍(しの)びてまいりけるを。よの聞へ有ければ。せうと達(たち)のまもらせ給ひけるとぞ ㊅むかし。男有けり。女のえうまじかりけるを。年(とし)をへて。よばひわたりける を。からうじて。ぬすみ出て。いとくらきにきけり。あくた川といふかわを ゐて。いきければ。草(くさ)のうへにをきたりけるつゆを。かれは何ぞとなん。 男にとひける。行さきおほく。夜もふけにければ。鬼(をに)有所ともしらで。神 【左丁】 さへいといみじう成。あめもいとうふりければ。あはらなるくらに。女をばおく にをし入て。男弓やなぐひをおいて。とぐちにをり。はや夜(よ)もあけなん。 と思ひつゝ。ゐたりけるに。鬼(をに)はや一くちに。くひてげり。あなやといひ けれど。神なるさはぎに。えきかざりけり。やう〳〵夜もあけ行にみれば ゐでこし女もなし。あしずりをして。なけどもかひなし 《送り仮名:新古今》しら玉かなにぞと人のとひし時つゆとこたへてきえなまじ物を これは二条の后(きさき)の。いとこの女御の。御もとにつかうまつるやうにて。ゐ給 へりけるを。かたちのいとめでたくおわしければ。ぬすみておひて出たり けるを。御せうどほり川のおとゞ。太郎くにつねの大 納(な)ごん。まだげらう にて。内へまいり給ふに。いみじうなく人有を聞付て。とゝめて取かへ したまふてげり。それをかくおにとはいふなりけり。まだいとわ かうてきさきのたゞにおわじける#1時となり ㊆むかし。をとこ有けり。京に有わびて。あづまにいきけるに。いせ