翻刻
【みん翻と無関係に作ったものを転載しているため、ふりがなと、適切な改行を欠く状態です】
とぞかゝれける。洛中の諸人是をみて。うそかまことかかくとは人々いひけれど。まことしからず思ひしに。扨はうたがふ所なし。正しく御自筆にて。高札をたてらるゝ上は。しるしなくてはかなふまじ。いざや人々見物して。末代のかたり句にせよやとて。しるも知らぬもみたも。見ぬも。其日の来るを待かねて。門前に市をなし。我見もらさじところぶまでのびあがり。洛中の貴賎ぐんじゆせり。其刻にもなりしかば大たらゐに水を入。なるほど魚を能料理て彼たらゐのほとりに御膳をぞすへける。
一休出給ひて。彼魚をひた食に食給ひて扨はんぎりにむかひて喝々との給
ひて。しはらく目をふさぎなどし給へば。見物のくんじゆ御顔をまもり。只今はきだし給ふかと。今や〳〵と待ゐたるに。さはなくしての給ひけるは。おの〳〵はる〳〵の御出なる程に。いつもより。一きわ手ぎはにはくべしと。種々思案をするに。中々はかれさうにもなし。ぜひにおよばず。糞になりとひりて捨申さん。はやおの〳〵も御帰りあれとて。内へ入給ふ。
上下万民きもをつぶし。さてもおどけたる御坊と。興をさまして帰りけるが。其中に心ある者のいひけるは。たゞ今参りたる魚は。みないきて渕におどる也。有がたき一言がな。まことに正法にきどくなしと社うけ承はりしに。