翻刻
候ひし。扨は弥有難し。我ら一人して見るのみも
罪ふかし。梓に鏤て。夢の世わたる人々の煩悩の眠
さましと思ふ也と。人に語ければ。一休の御事は。狂雲
集にくはしくと。申もあへず狂雲をもとめてみれ
ば。まことに御一代のたはぶれは残らぬそうなり。され
共其書は。もろこしのかたくな文のごとく書たれば
我も人もはぶしはつよけれ共。読くだく事ならず偏に
胡椒丸のみ也。風をひかぬ養生ばかりにては詮なし
よし同し事にても。おぼしき事いはざれば腹ふく
るゝわざ也。たとひ狂雲集には住吉の神なり共。
是を人に見せぬもいと口おし。扨かくあらはし侍る也
一休ばなし 巻之上 目録
一 一 休和尚(きうおしやう)いとけなき時(とき)旦那(だんな)とたはふれ問答(もんだう)の事【このはし渡るべからず】
二 同 師(し)の坊(ばう)につかへて。鯉(こい)をくひ給ふ事
三 一 休(きう)といふ名(な)の事 付 四 休居士(きうこじ)の事
四 蜷川新右衛門(になかわしんゑもん)はじめて一休にあふ事
付 哥少々
五 一休ならの薪(たきゞ)にて。百性の訴状(しじやう)書(かき)給ふ事
六 同 関(せき)の地蔵(じざう)くやうし給ふ事
七 同 閑居(かんきよ)し給ふを人々 不審(ふしん)する事