翻刻
【右丁】
きりつぼ《割書:桐|壺》 はゝきゞ《割書:帚|木》 うつせみ《割書:空|蝉》 ゆうがほ《割書:夕|顔》 わかむらさき《割書:若|紫》
すゑつむはな《割書:末摘|花》 もみぢのが《割書:紅葉|賀》 はなのえん《割書:花|宴》 あふひ《割書:葵》 さかき《割書:榊》
はなちるさと《割書:花|散里》 すま《割書:須|磨》 あかし《割書:明石》 みをづくし《割書:漂|𣼓》【注①】 よもぎふ《割書:蓬|生》
せきや《割書:関屋》 ゑあはせ《割書:絵合》 まつかぜ《割書:松風》 うすぐも《割書:薄|雲》 あさがほ《割書:朝|皃》
をとめ《割書:乙女》 たまかづら《割書:玉𩬿》【注②】 はつね《割書:初音》 こてふ《割書:胡|蝶》 ほたる《割書:蛍》
とこなつ《割書:常夏》 かゞりひ《割書:篝火》 のわき《割書:野分》 みゆき《割書:行|幸》 ふぢばかま《割書:蘭》
まきはしら《割書:槙柱》 うめがえ《割書:梅枝》 ふぢのうらは《割書:藤裏|葉》 わかな《割書:若菜|上》 わかな《割書:若菜|下》
かしはぎ《割書:柏木》 よこぶえ《割書:横|笛》 すゞむし《割書:鈴虫》 ゆふぎり《割書:夕|霧》 みのり《割書:御|法》
まぼろし《割書:幻》 にほふみや《割書:匂|宮》 こうばい《割書:紅梅》 たけかは《割書:竹|川》 はしひめ《割書:橋|姫》
しゐがもと《割書:椎本》 あげまき《割書:角|総》 さわらび《割書:早蕨》 やどりき《割書:寄|生》 あづまや《割書:東|屋》
うきふね《割書:浮舟》 かげろふ《割書:蜻|蛉》 てならひ《割書:手習》 ゆめのうきはし《割書:夢浮橋》
【注① 𣼓はUnicodeに記載あれど『大漢和辞典』には記載なし。】
【注② 𩬿はUnicodeに記載あれど『大漢和辞典』には記載なし。鬘の誤ヵ。】
【左丁】
この五十四帖のうちの さうぞく(装束)を。ちう(注)したる ふみ(書)に。源(げん)
語装束抄(ごさうぞくしやう)。男女装束抄(なんによさうぞくしやう)などあり。
狭衣(さごろも)とは。大弐三位(だいにさんゐ)といふ をんな(女)の つく(作)れるなり。源氏物語(げんじものがたり)
になすらへて。つくれるとなん。この大弐三位(だいにさんゐ)は。紫式部(むらさきしきふ)の
むすめ(女)なりければ。源氏物語(げんじものがたり)に。をさ〳〵おとるべくもあらじと
ぞ。この(此)ちう(注)をせし ふみ(書)に。下紐(したひも)といふあり。系図(けいづ)あり。系図(けいづ)
は。逍遥院殿(しやうやうゐんでん)つく(作)らせたまへりとなり。
伊勢物語(いせものがたり)は。伊勢(いせ)の御(ご)のつく(作)れるゆゑに。な(題号)をもかくいへ
りとぞ。また(又)在原業平(ありわらのなりひら)の。みづから しる(記)されしともいふ。あ(或)
る ひと(人)のいふ(説)に。業平(なりひら)の じき(自記)の さうし(草紙)ありしうへに。伊勢(いせ)
さま〴〵の こと(事)を かい(書)そへ(添)て。つくり(作)ものがたり(物語)となして。
現代語訳
【右丁】
桐壺、帚木、空蝉、夕顔、若紫、末摘花、紅葉賀、花宴、葵、榊、花散里、須磨、明石、澪標、蓬生、関屋、絵合、松風、薄雲、朝顔、乙女、玉鬘、初音、胡蝶、蛍、常夏、篝火、野分、行幸、藤袴、真木柱、梅枝、藤裏葉、若菜上、若菜下、柏木、横笛、鈴虫、夕霧、御法、幻、匂宮、紅梅、竹河、橋姫、椎本、総角、早蕨、宿木、東屋、浮舟、蜻蛉、手習、夢浮橋
【左丁】
この五十四帖のうちの装束について注釈した書物に、『源語装束抄』『男女装束抄』などがある。
『狭衣』とは、大弐三位という女性が作ったものである。『源氏物語』を模倣して作られたということである。この大弐三位は、紫式部の娘であったので、『源氏物語』に少しも劣るものではないだろうという。この注釈をした書物に、『下紐』というものがある。系図もある。系図は、逍遥院殿がお作りになったということである。
『伊勢物語』は、伊勢の御が作ったために、題名もこのように言うのだという。また在原業平が、自分で記したとも言う。ある人の説によると、業平の自記の草子があったその上に、伊勢がさまざまなことを書き添えて、作り物語としたのだという。
英語訳
[Right page]
Kiritsubo, Hahakigi, Utsusemi, Yugao, Wakamurasaki, Suetsumuhana, Momiji no Ga, Hana no En, Aoi, Sakaki, Hanachirusato, Suma, Akashi, Miotsukushi, Yomogiu, Sekiya, E-awase, Matsukaze, Usugumo, Asagao, Otome, Tamakazura, Hatsune, Kocho, Hotaru, Tokonatsu, Kagaribi, Nowaki, Miyuki, Fujibakama, Makibashira, Umegae, Fuji no Uraha, Wakana (Part 1), Wakana (Part 2), Kashiwagi, Yokobue, Suzumushi, Yugiri, Minori, Maboroshi, Niou Miya, Kobai, Takekawa, Hashihime, Shii ga Moto, Agemaki, Sawarabi, Yadorigi, Azumaya, Ukifune, Kagero, Tenarai, Yume no Ukihashi
[Left page]
Among these fifty-four chapters, there are books that annotate the costumes and dress, such as "Gengo Sōzoku-shō" (Commentary on Genji Costumes) and "Nannyo Sōzoku-shō" (Commentary on Men's and Women's Costumes).
"Sagoromo" was written by a woman called Daini Sanmi. It is said to have been created in imitation of "The Tale of Genji." Since this Daini Sanmi was the daughter of Murasaki Shikibu, it would not be inferior to "The Tale of Genji" in the least. Among the books that provide commentary on this work, there is one called "Shitahimo" (Lower Cord). There is also a genealogical chart. The genealogical chart is said to have been created by Lord Shōyō-in.
"The Tales of Ise" is called so because it was written by Lady Ise. It is also said that Ariwara no Narihira wrote it himself. According to one person's theory, there existed Narihira's own written manuscript, and Lady Ise added various things to it, making it into a work of fiction.