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コレクション: Code4Lib JP

伝染病ニ於ケル免疫ニ関スル研究 - 翻刻

伝染病ニ於ケル免疫ニ関スル研究 - ページ 15

ページ: 15

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4    白血球の殺菌力 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  之等の実験にも拘はらず、Denys は細胞免疫学説を理解しなかつた。議論 の余地なき白血球の意義を知悉せるに拘はらず、氏は白血球が殺菌力の唯一 の源であることを信じなかつた、と云ふのは殺菌力は、彼によれば、同じく 血清にも現はれ得るものとした。  然し之等の新知見が明かにされたので、殺菌性物質による細菌及び毒素の 中和に関する Bastin 以前の実験は、再検する必要に迫られ、Denys の他の 門弟 Havet に之が課せられた。   Havet は細菌を血液内に注射する時は、血清の殺菌力が減少すること;こ の減少は白血球の消失と平行して進行すること、何となればこの殺菌力の再 現は、注射後数時間にして観察するに、血液中に白血球の回復するのと一致 するからであることを見た。同様の類似は血液内に溶解性細菌製剤を送入せ る時にも確められた。  之等の事実の存在するために、 Bastin の研究は余儀なく支持されざるに 至つた。それ以後血清の殺菌力に関してなされた如何なる仕事も白血球の干 与を、真面目なる考えを以て考慮せなければならなかつたことは明白であつ た。Buchner は之を了解し、免疫についての彼の最初の概念に或る矯正を齎 した。       *  *  *  免疫に於ける最初の意義を白血球に認めたにも拘はらず、Buchner は1894 年に、白血球は遠距離にも同様に作用を及ぼし得るものである、即ち、体外 即ち、血漿の部にある細菌を破壊し得るものであると宣言した。  Denys の実験を復試して、氏は殺菌力を復活せしむるために非働性血清に 白血球を加ふれば充分なることを承認した。Denys と同じく、氏は細胞内の 作用過程の重要なることを知つた。白血球の浸出液を研究して、氏も亦、”喰 菌作用に極めて有効なる援助をせり、”と宣言した。然し之にも拘はらず細菌 の破壊に於けるこの作用過程に帰すべき部分に就ては保留することを妨げな かつた。彼によれば、吾人が述べたる如く、血漿中に喰菌細胞が分泌する産 物によつて、細菌は喰菌細胞の体外に於ても亦体内に於けると同様に破壊さ      白血球の殺菌力           5 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー れると。例へば冷凍によりその生活力を害された白血球は、それがために喰 菌細胞としての役目はしないがその殺菌作用を同等強く表はし得る事を氏は 証明しなかつたであらうか?  Buchner は冷凍用混合物中で白血球の抽出液を氷結し、次ぎに之を再び融 解すると、周囲の液に殺菌性物質を瀰散せしむる時に、白血球の原形質が死 滅することを了解しなかつた。かくの如き器械的の浸出液は普通に生ずるも のであり、而して生活せる白血球の原形質よりの生理的分泌液と同一視さる べきものなることを吾人をして少しも想定せしめない。此の実験がもたらす 唯一の結論は冷凍せる白血球は殺菌性物質を放出することである、この結論 よりしては免疫問題の全部を支配せる生活現象に関することを知るには、 Buchner の引用せるものより距離があるのである。  1894 年以来かなり多数の業績が Buchner の研究室で発表された;いずれ の業績も彼の学説に左袒する確証をもたらすことが出来なかつた。氏の一門 弟 Schattenfroh は Buchner やその共著者、(M,Hahn を含む,)によつて主 張された事実はいずれも白血球の分泌なる考で説明さるべきものでないと宣 言さへするに至つた。  もし白血球が、 Buchner の信ずる如く、生体内で分泌すれば、その分泌能 力は Pfeiffer の現象の際更に高度に達しなければならないであらう。「ブイ ヨン」注射により腹腔内を処置するとき極めて烈しい白血球外破壊が起り次 いで白血球の増殖を伴ふべきではなからうか?然るに、起る結果は反対であ る: 腹腔内の白血球系統がその活働の頂点にある間は、 Pfeiffer の現象は 全く欠如する。故に白血球の分泌と云つてはならぬ、と Metchnikoff は結論 した;彼は追加して曰く Buchner の実験に於ては、それは単に喰菌細胞の 苦悶に基く phagolyse (喰菌細胞の溶解)に関するものである。       *  *  *  扨て白血球の機能方法に関する問題を離れ、而してその内部に含有される 活働的原理は如何に現はれるかを見ることにしやう。  Hankin et Kanthack は殺菌性物質は白血球の嗜好性顆粒によつて現はさ

現代語訳

4    白血球の殺菌力 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  これらの実験にもかかわらず、デニスは細胞免疫学説を理解しなかった。議論 の余地なき白血球の意義を熟知していたにもかかわらず、氏は白血球が殺菌力の唯一 の源であることを信じなかった、というのは殺菌力は、彼によれば、同様に 血清にも現れ得るものとしたからである。  しかしこれらの新知見が明らかにされたので、殺菌性物質による細菌及び毒素の 中和に関するバスタン以前の実験は、再検する必要に迫られ、デニスの他の 門弟ハヴェットにこれが課せられた。  ハヴェットは細菌を血液内に注射する時は、血清の殺菌力が減少すること;こ の減少は白血球の消失と平行して進行すること、なぜならばこの殺菌力の再 現は、注射後数時間にして観察するに、血液中に白血球の回復するのと一致 するからであることを見た。同様の類似は血液内に溶解性細菌製剤を送入し た時にも確認された。  これらの事実の存在するために、バスタンの研究は余儀なく支持されざる 状況になった。それ以後血清の殺菌力に関してなされたいかなる仕事も白血球の関 与を、真面目な考慮をもって考慮しなければならなかったことは明白であっ た。ブフナーはこれを了解し、免疫についての彼の最初の概念にある矯正をもたら した。       *  *  *  免疫における最初の意義を白血球に認めたにもかかわらず、ブフナーは1894 年に、白血球は遠距離にも同様に作用を及ぼし得るものである、即ち、体外 即ち、血漿の部にある細菌を破壊し得るものであると宣言した。  デニスの実験を再試して、氏は殺菌力を復活させるために非働性血清に 白血球を加えれば十分なることを承認した。デニスと同じく、氏は細胞内の 作用過程の重要なることを知った。白血球の浸出液を研究して、氏もまた、「食 菌作用に極めて有効なる援助をした」と宣言した。しかしこれにもかかわらず細菌 の破壊におけるこの作用過程に帰すべき部分については保留することを妨げな かった。彼によれば、われわれが述べたように、血漿中に食菌細胞が分泌する産 物によって、細菌は食菌細胞の体外においても体内においてと同様に破壊さ      白血球の殺菌力             5 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー れると。例えば冷凍によりその生活力を害された白血球は、そのために食 菌細胞としての役目はしないがその殺菌作用を同等強く表し得る事を氏は 証明しなかっただろうか?  ブフナーは冷凍用混合物中で白血球の抽出液を氷結し、次ぎにこれを再び融 解すると、周囲の液に殺菌性物質を拡散させる時に、白血球の原形質が死 滅することを了解しなかった。かくのような機械的の浸出液は普通に生ずるも のであり、そして生活している白血球の原形質よりの生理的分泌液と同一視さ れるべきものなることをわれわれにして少しも想定させない。この実験がもたらす 唯一の結論は冷凍した白血球は殺菌性物質を放出することである、この結論 からは免疫問題の全部を支配する生活現象に関することを知るには、 ブフナーの引用したものより距離があるのである。  1894年以来かなり多数の業績がブフナーの研究室で発表された;いずれ の業績も彼の学説に味方する確証をもたらすことができなかった。氏の一門 弟シャッテンフローはブフナーやその共著者(M.ハーンを含む)によって主 張された事実はいずれも白血球の分泌なる考えで説明されるべきものでないと宣 言さえするに至った。  もし白血球が、ブフナーの信ずるように、生体内で分泌すれば、その分泌能 力はパイファー現象の際さらに高度に達しなければならないだろう。ブイヨン 注射により腹腔内を処置するとき極めて激しい白血球外破壊が起こり次 いで白血球の増殖を伴うべきではなかろうか?しかるに、起る結果は反対であ る:腹腔内の白血球系統がその活動の頂点にある間は、パイファーの現象は 全く欠如する。故に白血球の分泌と言ってはならぬ、とメチニコフは結論 した;彼は追加して言う、ブフナーの実験においては、それは単に食菌細胞の 苦悶に基づくファゴリーゼ(食菌細胞の溶解)に関するものである。       *  *  *  さて白血球の機能方法に関する問題を離れ、そしてその内部に含有される 活動的原理はいかに現れるかを見ることにしよう。  ハンキンとカンサックは殺菌性物質は白血球の好酸性顆粒によって現わさ

英語訳

4    Bactericidal Power of Leukocytes ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  Despite these experiments, Denys did not understand the cellular immunity theory. Despite being well aware of the indisputable significance of leukocytes, he did not believe that leukocytes were the sole source of bactericidal power, because according to him, bactericidal power could also appear in serum.  However, since these new findings were clarified, Bastin's previous experiments on the neutralization of bacteria and toxins by bactericidal substances needed to be re-examined, and this was assigned to Havet, another of Denys' disciples.  Havet observed that when bacteria are injected into blood, the bactericidal power of serum decreases; this decrease progresses in parallel with the disappearance of leukocytes, because the reappearance of this bactericidal power, when observed several hours after injection, coincides with the recovery of leukocytes in the blood. Similar correspondence was confirmed when soluble bacterial preparations were introduced into blood.  Due to the existence of these facts, Bastin's research was inevitably unsupported. It was clear that any subsequent work on the bactericidal power of serum had to seriously consider the involvement of leukocytes. Buchner understood this and brought certain corrections to his initial concepts about immunity.       *  *  *  Despite recognizing the primary significance of leukocytes in immunity, in 1894 Buchner declared that leukocytes could exert their action at a distance as well, that is, they could destroy bacteria located outside the cell, in the plasma.  Repeating Denys' experiments, he acknowledged that it was sufficient to add leukocytes to inactivated serum to restore bactericidal power. Like Denys, he recognized the importance of intracellular processes. Studying leukocyte extracts, he also declared that they provided "extremely effective assistance to phagocytosis." However, this did not prevent him from reserving judgment about the part that should be attributed to this process in bacterial destruction. According to him, as we have mentioned, bacteria are destroyed by products secreted by phagocytic cells into plasma both outside and inside the phagocytic cells.      Bactericidal Power of Leukocytes             5 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  For example, did he not prove that leukocytes whose vitality was impaired by freezing, though they could no longer function as phagocytic cells, could still express their bactericidal action with equal strength?  Buchner failed to understand that when he froze leukocyte extracts in freezing mixtures and then thawed them again, the protoplasm of leukocytes died when diffusing bactericidal substances into the surrounding fluid. Such mechanical extracts are normally produced and do not make us assume at all that they should be identified with physiological secretions from the protoplasm of living leukocytes. The only conclusion this experiment brings is that frozen leukocytes release bactericidal substances; from this conclusion to knowing about vital phenomena that govern all immunity problems, there is distance from what Buchner cited.  Since 1894, quite a large number of works have been published from Buchner's laboratory; none of these works could bring confirmation supporting his theory. One of his disciples, Schattenfroh, even went so far as to declare that none of the facts asserted by Buchner and his co-authors (including M. Hahn) should be explained by the concept of leukocyte secretion.  If leukocytes secrete in the living body, as Buchner believed, their secretory capacity should reach even higher levels during Pfeiffer's phenomenon. When the peritoneal cavity is treated with bouillon injection, shouldn't extremely violent extracellular destruction of leukocytes occur, followed by leukocyte proliferation? However, the result that occurs is the opposite: while the leukocyte system in the peritoneal cavity is at the peak of its activity, Pfeiffer's phenomenon is completely absent. Therefore, one should not speak of leukocyte secretion, concluded Metchnikoff; he added that in Buchner's experiments, it concerns only phagolyse (dissolution of phagocytic cells) based on the agony of phagocytic cells.       *  *  *  Now let us leave the question of how leukocytes function and see how the active principle contained within them appears.  Hankin and Kanthack showed that bactericidal substances are manifested by the eosinophilic granules of leukocytes