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148 感染並に免疫に於ける皮膚の意義
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吾人が総括せる実験で明瞭となりたるため、人間に於ける「ワクチン療法」
の問題は現今では判然した。
この治療法は日一日と臨床方面に領域を占めた。英語使用国に於ては、「ワ
クチン」の使用は特に拡つた。其所では、極めて軽度の鼻加答留から最も重
篤なる敗血性に至るまで、殆ど全部に感染を注射で治療してゐる。仏蘭西で
は、皮下注射は余りやらない。特に葡萄状球菌による感染 : 「フルンケル」
癰(「カルブンケル」)、中耳炎、「ニキビ」、骨髄炎、骨膜炎、膿瘍及び其の他
に於ては之に頼る。この治療は多くの場合満足を与ふることはない。連鎖状
球菌の或る型に於て、「プソイド=ヂフテリア」菌、肺炎球菌、フリードレン
デル氏菌による或る病竈に於て一様に発売にかかる Vaccin 又は Autobvaccin
を使用してゐる。この治療の比較的幸福なる結果は患者自身によつて造らる
る抗体の「オプソニン」作用に帰せらるるのである。生体内に既に形成された
抗体の作用に之等の作用が加つて、かくして結合せる抗体が感染に対し強力
なる武器を形成するからであらう。人が「ワクチン」療法を説明するのは斯く
の如くである。之は今日では全く証明のない殆ど独断説に過ぎない。
然し「ワクチン」療法のこの解説中には、何かしら既知の事実と融合し得な
いものがある。実験室内にて葡萄状球菌を使用せる人々は、その抗元性能力
は如何に無力であるかを知つてゐる。細菌学者にして有効なる抗葡萄状球菌
血清を掌中に所有せりと自負し得るものは少い。誇張なりと咎むることなく、
葡萄状球菌と同じく抗体の形成悪しき病原菌は余り知らざる所であることは
肯定出来る。然るにも拘らず、臨床家は――余り習慣となつてゐないが一様
に――「ワクチン」療法の処置によつて得たものと同じく著明に治癒すること
を知らざることを肯定してゐる。
実際的なる臨床上の成功は、発現に困難にして屡々問題とせらるる抗体に
帰すべきであらうか? 単純なる推理は此の点に保留を設くる様吾人を強ひ
ざるか? 葡萄状球菌は抗体のお蔭で治癒するものと仮定して、皮下に注射
せる数百万の菌体の補給は、既に生体は極めて多数の生菌に犯されてゐる時、
感染並に免疫に於ける皮膚の意義 149
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その重要性はあまりに誇張されてはゐないか?
* * *
研究室と臨床との間に於ける不一致は、「ワクチン」療法が攝受細胞層に限
局されてゐる方法に基くことを承認すれば消失するのである。
Wright によれば”「ワクチン」療法”は殺菌素、「オプソニン」及び喰菌素
の協同作用なりと云ふに反し、葡萄状球菌及び連鎖状球菌に関する吾人の実
験の証する所によれば、この治療は局所免疫より生じたるものであると考量
するものである。
臨床家は「ワクチン」療法のこの新案を霊感するに躊躇しなかつた。葡萄状
球菌及び連鎖状球菌の感染に対し海猽を防御することの可能性が証明される
や否や、特殊の湿布繃帯を単に使用することから、彼等はこれ等の試みを速
に人間に応用せんと努めた。臨床上得たる結果を玆に縷述する余裕はない。
只次のことを云ふに留めて置く、即ち現今に於ては皮膚並びに粘膜に限局せる
数千の患者が抗細菌性湿布によりその治療に成功してゐるのである。
* * *
多くの場合に於て、濾過器を通過せる培養即ち細菌体を含有せざる無毒性
の液が使用された。「フルンケル」、癰、瘭疽、骨炎、骨髄炎、瘻官の痕跡を
有する又は有せざる種々なる漏膿、肋膜炎、腹膜炎、産褥熱等が通常の「ワ
クチン」接種では挙げることの出来なかつた成績を以て処置された。
人間に於て得られた治療効果は動物に於ける実験に基いてゐた。そして合
理的なる「ワクチン」療法は抗体の形成に基くのではなく罹患せる器官又は組
織の Vaccination に基くべきことの意見を実証した。
ここに吾人は「ワクチン」療法の機転を如何に考ふべきか。この治療方法は
人の信ずる如く抗体の形成に基くものではない。浸蝕されない様に、生体は
病中、それ自身出来るだけの最大努力を払ふのである。「ワクチン」治療剤は
病細胞を治癒するのではなく、単に未だ犯されざる細胞を保護するのである。
既に発生せる病気の経過中に、「ワクチン」は特に未だ障礙を受けざる攝受
細胞が Virus に感ずる所の親和力を飽和する効力を有する : 即ち「ワクチ
現代語訳
148 感染並びに免疫における皮膚の意義
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我々が総括した実験で明瞭となったため、人間におけるワクチン療法の問題は現在では明確になった。
この治療法は日一日と臨床方面に領域を占めた。英語使用国においては、ワクチンの使用は特に広まった。そこでは、極めて軽度の鼻カタルから最も重篤な敗血症に至るまで、ほとんど全ての感染を注射で治療している。フランスでは、皮下注射はあまり行わない。特にブドウ球菌による感染:フルンケル、癰(カルブンケル)、中耳炎、ニキビ、骨髄炎、骨膜炎、膿瘍及びその他においてはこれに頼る。この治療は多くの場合満足を与えることはない。連鎖球菌のある型において、偽ジフテリア菌、肺炎球菌、フリードレンデル氏菌による或る病巣において一様に発売にかかるワクチン又は自家ワクチンを使用している。この治療の比較的良好な結果は患者自身によって造られる抗体のオプソニン作用に帰せられるのである。生体内に既に形成された抗体の作用にこれらの作用が加わって、かくして結合した抗体が感染に対し強力な武器を形成するからであろう。人がワクチン療法を説明するのはこのようである。これは今日では全く証明のないほとんど独断説に過ぎない。
しかしワクチン療法のこの解説中には、何かしら既知の事実と融合し得ないものがある。実験室内でブドウ球菌を使用した人々は、その抗原性能力は如何に無力であるかを知っている。細菌学者にして有効な抗ブドウ球菌血清を掌中に所有していると自負し得る者は少ない。誇張なりと咎めることなく、ブドウ球菌と同じく抗体の形成が悪しき病原菌はあまり知られていない所であることは肯定できる。それにもかかわらず、臨床家は――あまり習慣となっていないが一様に――ワクチン療法の処置によって得たものと同じく著明に治癒することを知らないことはないと肯定している。
実際的な臨床上の成功は、発現に困難にしてしばしば問題とされる抗体に帰すべきであろうか? 単純な推理はこの点に保留を設けるよう我々を強いないか? ブドウ球菌は抗体のお蔭で治癒するものと仮定して、皮下に注射した数百万の菌体の補給は、既に生体は極めて多数の生菌に犯されている時、
感染並びに免疫における皮膚の意義 149
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その重要性はあまりに誇張されてはいないか?
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研究室と臨床との間における不一致は、ワクチン療法が受容細胞層に限局されている方法に基くことを承認すれば消失するのである。
ライトによれば「ワクチン療法」は殺菌素、オプソニン及び食菌素の協同作用なりと云うに反し、ブドウ球菌及び連鎖球菌に関する我々の実験の証明する所によれば、この治療は局所免疫より生じたものであると考量するものである。
臨床家はワクチン療法のこの新案を霊感するのに躊躇しなかった。ブドウ球菌及び連鎖球菌の感染に対しモルモットを防御することの可能性が証明されるや否や、特殊の湿布包帯を単に使用することから、彼らはこれらの試みを速やかに人間に応用せんと努めた。臨床上得た結果をここに詳述する余裕はない。ただ次のことを云うに留めて置く、即ち現在においては皮膚並びに粘膜に限局された数千の患者が抗細菌性湿布によりその治療に成功しているのである。
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多くの場合において、濾過器を通過した培養即ち細菌体を含有しない無毒性の液が使用された。フルンケル、癰、瘭疽、骨炎、骨髄炎、瘻管の痕跡を有する又は有しない種々な流膿、肋膜炎、腹膜炎、産褥熱等が通常のワクチン接種では挙げることのできなかった成績を以って処置された。
人間において得られた治療効果は動物における実験に基づいていた。そして合理的なワクチン療法は抗体の形成に基くのではなく罹患した器官又は組織のワクチネーションに基くべきことの意見を実証した。
ここに我々はワクチン療法の機転を如何に考えるべきか。この治療方法は人の信じるように抗体の形成に基くものではない。浸蝕されないように、生体は病中、それ自身できるだけの最大努力を払うのである。ワクチン治療剤は病気の細胞を治癒するのではなく、単にまだ犯されない細胞を保護するのである。
既に発生した病気の経過中に、ワクチンは特にまだ障害を受けない受容細胞がウイルスに感じる所の親和力を飽和する効力を有する:即ちワクチ
英語訳
148 Role of Skin in Infection and Immunity
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Due to our summarized experiments becoming clear, the problem of vaccine therapy in humans is now evident.
This treatment method occupied territory in clinical practice day by day. In English-speaking countries, the use of vaccines spread particularly widely. There, they treat almost all infections by injection, from the mildest nasal catarrh to the most severe septicemia. In France, subcutaneous injections are not performed as much. They rely on this especially for infections caused by staphylococci: furuncles, carbuncles, otitis media, acne, osteomyelitis, periostitis, abscesses and others. This treatment does not give satisfaction in many cases. For certain types of streptococci, for certain lesions caused by pseudodiphtheria bacteria, pneumococci, and Friedländer's bacteria, they use vaccines or autovaccines that are uniformly commercially available. The relatively favorable results of this treatment are attributed to the opsonic action of antibodies produced by the patients themselves. Because these actions are added to the actions of antibodies already formed in the living body, and thus the combined antibodies form powerful weapons against infection. This is how people explain vaccine therapy. This is today nothing more than almost a dogmatic theory with no proof whatsoever.
However, in this explanation of vaccine therapy, there is something that cannot be reconciled with known facts. Those who have used staphylococci in laboratories know how powerless their antigenic capabilities are. Few bacteriologists can boast of possessing effective anti-staphylococcal sera in their hands. Without being blamed for exaggeration, it can be affirmed that pathogenic bacteria with poor antibody formation like staphylococci are little known. Nevertheless, clinicians - though not habitually but uniformly - affirm that they are not unaware of cures as remarkable as those obtained by vaccine therapy treatment.
Should practical clinical success be attributed to antibodies that are difficult to manifest and often problematic? Does simple reasoning not force us to reserve judgment on this point? Assuming that staphylococci are cured thanks to antibodies, when the living body is already affected by an extremely large number of living bacteria, is not the importance of supplementing millions of bacterial bodies injected subcutaneously too exaggerated?
Role of Skin in Infection and Immunity 149
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The discrepancy between laboratory and clinic disappears if we acknowledge that vaccine therapy is based on methods localized to receptor cell layers.
According to Wright, "vaccine therapy" is the cooperative action of bactericidal substances, opsonins, and phagocytes, but according to what our experiments with staphylococci and streptococci prove, we consider that this treatment arises from local immunity.
Clinicians did not hesitate to be inspired by this new idea of vaccine therapy. As soon as the possibility of protecting guinea pigs against staphylococcal and streptococcal infections was proven, simply by using special wet bandages, they endeavored to quickly apply these attempts to humans. There is no time here to detail the results obtained clinically. I will only mention the following: that at present thousands of patients with conditions localized to skin and mucous membranes have been successfully treated with antibacterial compresses.
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In many cases, cultures passed through filters - that is, non-toxic liquids containing no bacterial bodies - were used. Furuncles, carbuncles, whitlows, osteitis, osteomyelitis, various purulent discharges with or without traces of fistulas, pleurisy, peritonitis, puerperal fever, etc., were treated with results that could not be achieved with ordinary vaccine inoculation.
The therapeutic effects obtained in humans were based on experiments in animals. And this proved the opinion that rational vaccine therapy should be based not on antibody formation but on vaccination of affected organs or tissues.
Here we must consider how to think about the mechanism of vaccine therapy. This treatment method is not based on antibody formation as people believe. To avoid being eroded, the living body exerts its maximum possible effort during illness. Vaccine therapeutic agents do not cure diseased cells, but simply protect cells that have not yet been affected.
During the course of already developed disease, vaccines have the power to saturate the affinity that receptor cells not yet impaired feel toward viruses: that is, vacci-