翻刻
一右之通孫蔵義者和吉江相続
為致度存念姉義者存寄ニ不
相叶者御座候得者迚和談仕候存寄
無御座候得者此儘差置相続之所
【右丁の終わり】
【左丁】
相定可申事与不奉何連れニも
罷帰文右衛門江申聞候上猶又相談も
可仕与孫蔵江去暮伴助死去之
砌左程伴助申候趣も有之候ハヽ
早速相続可遂候処只今迠者
如何致し相決不申候哉旨承候処
死去之刻萬端屈詫【=託】其上暮之
義ニ付取込故跡式所ニ無御坐当年ニ
至候而ハ作業其外色々差支親類
共も故障ニて集不申夫故延引
之由申之候付屈詫取込之義尤ニ
候得共跡目之所大切之義殊伴助
聢と申候義ニ候ハヽ彼是六ヶ敷事
無之義早速和吉を以相続可為
致義候得共如何之相談ニ候哉与相尋
候処殊之外腹立仕私共風情左様
問詰候而ハ返答難致候間いつれ共
宜取計家相立候様致呉候様
申聞最早相談及間敷之旨
申切候義御座候
右之通孫蔵申切候上ハ私迚も
致方も無御座血筋之義此度之
相談第一之者ニ御座候得者除切候
ては本意も相立間敷と色々
現代語訳
一、このように孫蔵は和吉に相続させたいと考えており、姉の考えは叶わないということでございますが、とても和談する気持ちもございませんので、このまま放置して相続のところを
【右丁の終わり】
【左丁】
決定すべきことなのに、なぜ今まで帰って文右衛門に申し聞かせた上で、なお相談もしようと孫蔵に「去年の暮れ、伴助死去の際、それほど伴助が申していたこともあったのであれば、早速相続を遂げるべきところ、今まではどうして決定しないのですか」と尋ねたところ、「死去の時は万事お悔やみで、その上年末のことで取り込み中のため、跡式どころではございませんでした。今年に至っては農作業その他色々と差し支えがあり、親類たちも都合が悪くて集まらず、そのため延引した」と申しました。お悔やみや取り込みのことはもっともでございますが、跡目のことは大切なことで、特に伴助がはっきりと申していたことであるならば、あれこれ面倒なことはなく、早速和吉をもって相続させるべきことでございますが、どのような相談なのですかと尋ねたところ、ひどく腹を立て、「私どものような者にそのように問い詰められては返答しにくいので、いずれにしても良いように取り計らい、家が立つようにしてください」と申し聞かせ、もはや相談には及ばないと申し切ったのでございます。
このように孫蔵が申し切った以上は、私としても仕方がございません。血筋のことで、今度の相談で第一の者でございますから、除外しては本意も立たないだろうと色々