翻刻
にて先津久戸まて退き雨は強し大風にて
はあり下よりは水かさ増丹波殿もひとしほ
里に濡られ夫ゟ元方御納戸町條塚市太夫と
いふ同心方へゆる〳〵被参候市太夫方へ退れ候
縁は市太夫弟津右衛門といふ者丹州の中小性
勤居れる縁也 丹波守殿 濡しよほたれたる
を見て市太夫御笑止なる儀第一御心え可被成
候とて酒なと出し吸物を出し小袖を召替
られましきやと申けれは丹波守殿夫は過分
貸候へとて市太夫か小袖羽織共に差替られたりと
市太夫直に我等と雲八へ物語也諸道具を尋候
得は其沙汰は参らす命から〳〵にて家中
にも少し溺死有之よし承はり候と申候又市太夫
いへるは何共笑止千万御痛間敷と申候由其後
外にて承候へは結構なる道具も皆水にひた
り掛ものなとは箱の内にてころ〳〵に糊離
れ候由承候茶入茶碗の内へも水いり袋も
みちんに成候由又去ル方茶入を桐のやらう