翻刻
小日向衆は安き心も無之由扨々小日向筋今
度の大水にて悪敷場所に成申候
一赤坂松平安芸守屋敷之土手崩れ新屋
敷細井金三郎仁賀保茂兵衛井上吉之丞
此三軒へ崩れかゝり本家みぢんに潰れたり
金三郎家来二人打殺され候大あやまちも一両
人有之候仁賀保方にも人損し候由金三郎に
は其少し前山崩れ可申候御逐被成候得と或
老人の申に依て前の町家へ退かれ居られ
候所米なくては難叶とて用人の弟取に
走り行しか二度めに山崩けり死たり弐人共
又壱人共いふ扨々危き哉水はまだ流れても
助る事もあれとも金三郎今少し油断して
出られすは本家の内にて命有間敷也かれ
をおもひ是をみるに物に即けの申事は不同心
なる事にても可用事也又物に即のゆかさる
人の申事は縦老人申出し我好む事にても用
ましき事也用ふると用ひさるとにて大切の命