東京学芸大学「学びと遊びの歴史」を翻刻!

コレクション: 学校教材発掘プロジェクト 3

唐詩選画本, [二編]5巻 - 翻刻

唐詩選画本, [二編]5巻 - ページ 53

ページ: 53

翻刻

   盧渓(ろけいに)別(わかる)_レ 人(ひとに)    王昌齢(おうせうれい) 武陵渓口(ふりやうのけいこう)駐(とゝむ)_二扁舟(へんしうを)_一渓水(けいすい)随(したかつて)_レ君(きみに)向(むかつて)_レ北(きたに)流(なかる) 行(ゆいて)到(いたつて)_二荊門(けいもんに)_一 上(のほらは)_二 三峽(さんきやうに)_一莫(なかれ)_下将(もつて)_二孤月(こけつを)_一対(たいする事)_中猿愁(ゑんしうに)_上 ふりやうけいから舟にのりゆるゝか【「ゆかるゝか」ヵ】あまりなこりおしいゆへ舟をとゝめてけいすいを見れはうらやましい水は こなたについてきたへなかるゝがおれは水にもおよはぬしたいゆく事かならぬさんねんじや◦けいもんあたりへ ゆき三こうなどへのほつたならはさるのたくさんな処じやが目に月を見みゝにはさるをきかれた ならはうれいそへてさびしかろふほとにかまへて孤月をもつてさるの声にたいしてきくやふな事をせらるゝな 月夜さしのしふんにはひとしほさるもなくものじやほとにくわしくはせんちうを見るへし

現代語訳

盧渓にて人に別る 王昌齢 武陵の渓口に扁舟を駐む 渓水君に随って北に向かって流る 行きて荊門に到り三峡に上らば 孤月を将って猿愁に対する莫れ 武陵渓から舟に乗って行かれるのがあまりに名残惜しいので舟を留めて渓水を見れば、うらやましいことに水はあなたについて北へ流れて行くが、私は水にも及ばぬ身体で行くことができない。残念なことである。荊門あたりへ行き三峡などへ上ったならば猿のたくさんいる処であるが、目に月を見、耳には猿を聞かれたならば憂いを添えて寂しかろうほどに、構えて孤月をもって猿の声に対して聞くような事をされるな。月夜差しのしい時分には一入猿も鳴くものであるほどに。詳しくは箋註を見るべし。

英語訳

Parting from Someone at Lu Creek - Wang Changling At the creek mouth of Wuling, a small boat is moored, The creek water follows you, flowing northward. When you travel to Jingmen and ascend the Three Gorges, Do not let the solitary moon confront the sorrow of gibbons. Since your departure by boat from Wuling Creek is so regrettable, I stop the boat to look at the creek water. How enviable that the water follows you flowing north, while I, with a body that cannot even match the water, cannot go with you. What a pity! When you reach the Jingmen area and ascend places like the Three Gorges, where there are many gibbons, if you see the moon with your eyes and hear gibbons with your ears, it will add to your melancholy and loneliness. Be careful not to listen to the gibbon cries while gazing at the solitary moon. During lonely moonlit nights, gibbons cry all the more. For details, one should consult the annotations.