翻刻
明治(めいぢ)十七年八月
吾三河国設楽郡(わがみかはのくにしだらごほり)
稲橋村(いなはしむら)の古橋輝皃(ふるはしてるのり)と
いふ人 豫(かね)て凶歳(きようさい)の怖(おそ)るべき事(こと)を
衆人(しゆうじん)にしらしめんとて各村落(かくそんらく)の
農民(のうみん)を集(あつ)め天保(てんほ)七 年(ねん)の凶歳(きようさい)に
遭(あ)ひたる老人(らうじん)をして其時(そのとき)の
有様(ありさま)を親(した)しく談話(だんわ)なさしめ
たるに一同皆(いちどうみな)驚駭(きやうがい)し饑饉(きゝん)の怖(おそ)る
べき念(ねん)を引起(ひきおこ)し兼(かね)て郡役所(ぐんやくしよ)より
誘導(いうどう)ありて貯穀(ちよこく)いたし居(ゐ)れども
猶一層(なおいつそう)凶荒(きやうくわう)の手当(てあて)てを怠(おこた)るべからざる
事(こと)を悟(さと)り益(ます〳〵)注意(ちうゐ)するに
至(いた)れり