みんなで翻刻ver1

コレクション: STAGE5

凶荒図録 完 - 翻刻

凶荒図録 完 - ページ 27

ページ: 27

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三河国北設楽郡(みかはくにきたしだらこほり)なる或老人(あるらうじん)の話(はなし)に 過(すぐ)る天保(てんほ)七 年(ねん)の凶歳(きようさい)に食物(しよくもつ)の足(た)ら ざるはもとよりなれども又 塩(しほ)の不足(ふそく)せしには 尤困難(もつともこんなん)を極(きは)めたり初(はじ)めのほどはさる事(こと)なか りしも後(のち)には塩気(しほけ)を含(ふく)める床(ゆか)の古筵(ふるむしろ)などを こまかに刻(きざ)み熬(い)りて食(しよく)せしとぞかく 塩(しほ)の拂底(ふつてい)なるは凡(すべ)て凶歳(きようさい)は陰雨多(いんうおほ)きもの ゆゑ製塩(せいえん)の足(た)らざるによりと此話(このはなし)は容易(たやす)く人の心付(こゝろつか)ざる 事(こと)なれば爰(こゝ)に記(しる)して後(のち)のいましめとす殊(こと)に塩(しほ)は永(なが)く年(とし)を経(ふる)るに従(したか)ひ 塩膽(にがり)去(さ)りてよき品(しな)となるものなれば人々(ひと〴〵)蓄穀(ちくこく)に次(つぎ)て塩(しほ)の貯(たくは)へは怠(おこた)るまじき事(こと)なり