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コレクション: STAGE5

凶荒図録 完 - 翻刻

凶荒図録 完 - ページ 28

ページ: 28

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夫人(それひと)の力(ちから)の及(およ)ばぬは天災凶荒(てんさいきようくわう)なれば人皆凶荒飢饉(ひとみなきようくわうきゝん)の 備(そな)へは常(つね)に怠(おこた)るまじき事(こと)なりされ共人々其時(どもひと〴〵そのとき)に至(いた)らざれば 用心(ようじん)をなさず平生(へいぜい)は兎角(とかく)に怠(おこた)りがちなるものなれども 凶荒(きようくわう)の年(とし)と死(し)といふ事(こと)は決(けつ)してなきものに あらざれば誰人(たれびと)も豫(あらかじ)め備(そなへ)はなくて叶(かな)はぬ事(こと)なり 彼蟻(かのあり)と蜂(はち)とを見(み)よ蠢爾(しゆんじ)たる小虫(しやうちう)なれども平生力(へいぜいちから)を 協(あは)せ夏秋(なつあき)のうちに食料(しよくりやう)を集(あつ)め置(お)き寒気(かんき)の節(せつ)は 蟄居(ちつきよ)して之(これ)を食(しよく)し命(いのち)を保(たも)つことを得(う)るなり 然(しか)るに万物(ばんぶつ)の長(ちやう)たる人間(にんげん)にして凶荒(きようくわう)の備(そな)へを怠(おこた)たるは 目前(もくぜん)の欲(よく)に覆(おほ)はれ油断(ゆだん)するより起(おこ)るなり実(じつ)に蟻蜂(ぎほう)に 対(たい)しても恥(はづ)かしき事(こと)ならずやいかに無学文盲(むがくもんまう)の愚夫愚婦(ぐふぐふ)にても 人間(にんげん)の智恵(ちゑ)は備(そな)はるものなればよく〳〵|胸(むね)に手(て)を置(おき)て 蟻蜂(ぎほう)に笑(わら)はれざる用心(ようじん)こそ肝要(かんえう)なれ