翻刻
焼倒れしを殊の外悦ひ笑れける是ニ女とも様〻
人形を拵へ我劣らしと焼けるをこよのふ悦ひ
日毎ニいくつとなく焼捨ける次第ニ其事増長し
自らの衣類に火を落し焼上るを楽しみ後ハ
側の屏風襖に火を付て焼けるを悦ハれ火危
しと消せハ殊の外不興せらる斯てハ火危しと
奥家老島田平右衛門表役人に通しけれハ大目付
桃井又右衛門権田金左衛門評義して爰ニ牢をしつ
らひ侍妾を押入れ番人油断なく守りけるニいか
るる隙にや牢より出て殿舎に火を放つ故漸〻
召捕て牢に押入其後は昼夜不寝番をして守
りけるに又殿中に火を放つ其火いつくゟ来るにや是を
知らす|角(カク)牢室に押込らるゝとも一念の猛火一度ハ城
郭を焼崩さて置へきかと云けるまて目付島田甚平
神吉官大夫より家老板倉八右衛門松本勘解由松本
傳七郎に訴ふ其旨主殿頭へ言上せしかハ是本
心にて致すニあらす狂病のなす所也死罪に及ふ
へからす軽く罪せよと|宣(ノタマ)ふされとも一度ハ城郭
を焼崩さんと云ふて牢を守りぬれとも抜出ぬ
れハ生てハ置かたしと評定一決して十月十三日磔
に掛らる左右の脇を突抜き三の鎗に胸を突
けるに此疵口より火玉飛出普賢山にそ入にける其