翻刻
帰す事中〻目も当てられぬ恐ろしき次第筆紙
に尽し難く大山も今崩るゝ様ニ見へけれハ肥後国
熊本の城主細川侯より人数をくり出し川尻に
小早舟五艘川舟数多九曜の星の帆幕を張
兵具を用意し島原領松島の沖に乗出し御
使者にハ細川蔵人正井求馬両人大勢引連島
原の城下に着舟す場内より番頭土井兵蔵出向ひ
暫く対談す同日四ツ時右焼所見分として津山
斧五郎御案内として御同道あり扨又同日午の刻
に谷川甚五郎村上喜内両人江戸表に御注進に被
差立打続二月朔日夜戌の刻より亥の刻迄山の
中央に火燃出る事夥し同三日丑の刻地震霹
靂天地も今崩るゝか如く同六日午の刻麓三里ほど
の間山の中央に火吹出し其長さ廿丁横巾五丁ば
かりの間大口四十八ケ所燃出す翌七日鈴木傳五江戸
へ御注進の飛脚に差立らる并ニ足軽飛脚追〻
出立す昼は闇となり煙ハ天地ニ充満し物の色相
も見へわかす夜に入ては火花天地に飛散る勢ひ目
も当られぬ有様|《ルビ:奈落|ナラク》地獄も是にハ過しと言語口
舌ニ述がたし誠に前代未聞古今希代の珍事
恐敷といふも猶疎なり
一 同三月二日神代村ゟ注進《割書:私ニ曰島原領村並ひなから神|代古辺両村ハ佐賀領也然ハ左》