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只人ならぬ粧ひ何か苦しかるへき語り給へといへは
少し打笑ひ恥かしくも仰候もの哉はな〳〵敷名
のるへき者ならすいと賤しきものにて親もなく兄弟
と住さる御家中へ御奉公仕たく奉頼候又とぞ上り
候同人と帰りける玄順見れは見る程美しく不審な
る人と思ひ居たるに又二三日過て弥全快仕候故御礼
をも申上たく候得共貧しき身ゆへ心ならず打過
参り出候と申ける奉公に有付候ハヽ御恩報し
奉るへしと申玄順申けるハ奉公口とても住居さ
へ知らねは急に能所あれとも御知らせも成かたし見苦
しけれ共暫く御逗留有て奉公口をも御聞合せあれ
かしと申けれは夫は殊に一かたならぬ有かたき次第
也御留置下され御世話奉頼らし申けれは玄順
飛立計り嬉しく左思召さは直ニ留り玉へと云は
女も世ニ嬉しけニ止りぬ玄順も無妻成しかは垢付
たるを洗ひ濯き食物の拵も甲斐〳〵しく殊にある
へくもあらぬ美食故何国のいか成ものともしらされ
共いつしか浅からぬ中となり無程只ならぬ身となり
七月に当て男子を産り其粧ひ母に似て美し
き事類ひなし日数百日に及ひ能物云歩行する
事二歳余りの小児に過たり所の人怪しみ
此母何者共しれす出生の子知恵付も備へ聞ハ