← 前のページ
ページ 95 / 103
次のページ →
翻刻
西施石(せいしせき) 楼穎(ろうゑい)
西施昔日浣紗(せいしせきじつくわんさの)
津(しん)石上青苔(せきしやうのせいたい)
思(し)_二殺(さつす)人(ひとを)_一 一(ひとたび)去(さつて)_二姑(こ)
蘇(そを)_一不(ず)_二復返(またかへら)_一
岸傍桃(がんほうのたう)
李(り)為(ためにか)_レ誰(たれが)
春(はるなる)
《割書:西施(せいし)は呉王(ごこう)に|愛(あい)せられたが|むかし此川はたで|紗をせんたくして|あつた其とき腰|をかけた石じやと|いふて今は苔(こけ)|むしてあるがこゝを通(とを)るほど|のものが此石をみては西施(せいし)を|思ひ出さぬものはないしたが|西施も一たびさつて呉国(ごこく)の|姑蘇台(こそだい)へ行てよりついにむな|しくかへらぬ只此川のほとり|の桃李(とうり)の花が咲(さき)つれてあるが|西施はゐぬにたがために春(はる)の景(けい)|をなすぞと花に情(しやう)を| もたせて| 置なり》【挿絵】
現代語訳
西施石
楼穎
西施が昔この津で紗を洗濯していた
石の上には青い苔が生えている
人を思い殺すほどに美しい西施も、一度姑蘇の地を去ってからは
ついに再び帰ってくることはなかった
岸辺の桃や李の花は誰のために
春を迎えているのだろうか
《解説:西施は呉王に愛された美女であったが、昔この川端で紗を洗濯していた。その時に腰をかけた石だと言って、今は苔が生えているが、ここを通るほどの者で、この石を見て西施を思い出さない者はいない。しかし西施も一度去って呉国の姑蘇台へ行ってからは、ついに空しく帰らない。ただこの川のほとりの桃李の花が咲き連なっているが、西施はいないのに誰のために春の景色をなすのかと、花に感情を託して詠んだものである》
英語訳
Xi Shi's Stone
Lou Ying
Xi Shi once washed silk gauze at this ferry
Now green moss grows upon the stone
She who could kill men with her beauty, once she left
Gusu, never returned again
For whom do the peach and plum blossoms
Along the riverbank bloom in spring?
《Commentary: Xi Shi was a beautiful woman beloved by the King of Wu. Long ago at this riverbank she used to wash silk gauze. People say this is the stone where she used to sit, and now moss has grown over it. Anyone passing by who sees this stone cannot help but think of Xi Shi. However, once Xi Shi left for Gusu Terrace in the State of Wu, she never returned. Only the peach and plum blossoms continue to bloom along this riverbank, but with Xi Shi gone, for whom do they create this spring scenery? This poem expresses emotion through the flowers.》