翻刻!草双紙の世界

コレクション: @chinjuさんと読む草双紙

化物世界夜半嵐 : 3巻 - 翻刻

化物世界夜半嵐 : 3巻 - ページ 12

ページ: 12

翻刻

じや□□… ともしらすうゐ川□… ながれゆく所にこゝに ゑちごかゞのあいだに おやしらず子しらずと いふ所ありてこの 山に馬斗(ばます)【?】といへる ばけものすみけるが はるか□【に?】しやりんのかいしやう をながるゝをみつけ ふびんにおもひければ いそぐにいたりよう〳〵 引あげつかはし□□【ける】が じやりんははやはんしはんせう【蛇鱗ははや半死半生】 にてひとこゝちもあら          ざれは まづ馬斗のうちへとも ない【伴い】いたわりしはなさけある                化物也 【右ページ下、台詞】 ヤレ〳〵 かはいや 中〳〵 よい わか  しゆしや【若衆じゃ】 【左ページ】 さて馬■【年?斗?】はじや りんをわがすみかへ ともないしさゐを たづぬればさど のくにまでやうじ ありてまいる ものなるがなん ふう【難風】にであい かくのしあわせ またけらいも どふ〴〵いたせしが そのばよりゆくへ しれねばとてもの ■せ■■■■に一両 にちさしおかれく■【だ?】 されよといゝければ こゝろよくかけ合 とゝめおくうち むすめに爾加里(にかり)【?】といふものしや りんをみそめつゐにわり▲ ▲なき【理無き=理屈をこえて親しい】 中と なり すこしはうさを はら   し  ける 【左ページ台詞】 〽イヤゆだんの ならぬ やつらだ 〽わたしやおまへゆへに 太郎【大じ?】さんへにつさんを する  ぞへ 〽馬斗【?】どのゝ 手まへもあれば   いまはどふも

現代語訳

蛇〔判読困難〕灯火も知らぬ川を〔判読困難〕流れゆく所に、ここに越後と加賀の間に「親知らず子知らず」という所があって、この山に馬斗(ばます)という化け物が住んでいたが、はるかに蛇鱗の変わり果てた姿が流れるのを見つけ、不憫に思ったので、急いでそこに至り、ようやく引き上げて介抱した〔判読困難〕が、蛇鱗はすでに半死半生の状態で、人心地もない有様であった。まず馬斗の家へと連れて行き、いたわったのは情け深い化け物である。 【右ページ下、台詞】 「やれやれ、可愛いや。なかなかよい若衆じゃ。」 【左ページ】 さて馬斗は蛇鱗を我が住処へ連れて行き、その事情を尋ねると、「佐渡の国まで用事があって参る者であるが、難風に出会い、このような不幸に遭った。また家来もどうなったかわからないが、その場より行方知れずなので、とりあえず一両日お預かりください」と言えば、心よく快諾して留め置いた。その間に娘に爾加里(にかり)というものが蛇鱗を見初めて、ついに理屈を越えて親しい仲となり、少しは憂さを晴らした。 【左ページ台詞】 「いや、油断のならぬやつらだ。」 「わたしはお前ゆえに大変な心配をするぞえ。」 「馬斗殿の手前もあれば、今はどうも〔続く〕」

英語訳

The serpent [text unclear] not knowing the lantern light, flowing down the river [text unclear], came to a place between Echigo and Kaga provinces called "Oyashirazu Koshirazu" (where parents and children lose sight of each other). A monster called Bamasu lived in these mountains, and seeing Jarin's pitiful form floating by from afar, took pity on him. Rushing to the spot, he managed to pull him up and nurse him back to health, though Jarin was already half-dead and barely conscious. First taking him to Bamasu's dwelling and caring for him - this was indeed a compassionate monster. [Right page below, dialogue] "Well, well, how pitiful. Quite a fine young man indeed." [Left page] Now Bamasu brought Jarin to his dwelling and inquired about the circumstances. Jarin replied, "I had business in Sado Province, but encountered a terrible storm and met with this misfortune. I don't know what became of my retainer either - he disappeared from that very spot. Please shelter me for a day or two." Bamasu gladly agreed and let him stay. During this time, his daughter named Nikari took a fancy to Jarin, and they eventually became intimately close beyond all reason, which helped ease his sorrows somewhat. [Left page dialogue] "Indeed, they are not to be taken lightly." "Because of you, I'm terribly worried." "Given Bamasu's kindness, now I really cannot..."