翻刻
むかしさどのくに
ふたついわといへる
すせんじやうも
しくべきと
おもふ
ほらあなに
朱(しゆ)□(はん)といへる【朱番あるいは朱盤?】
ばけもの
すみて人みんを
なやましこれに
したがふようくわい
あまたありけるが
きんらいはにんげんも
かしこく中〳〵ひと
とふりのばけやう
にてはゆかず
とかくばけものが
【左ページへ】
化物をおそれ
させるほどの
をそろしきばけ
よふをくふう
すべしと
おやかたしゆはんは
でしどもを
あつめすまうの
ぢどりを見る
ごとくしゆ〴〵
さま〴〵のばけ
よふのけいこを
はけませそれでは
ならぬこれでは
ならぬとしかりつけ
ばけものもなか〳〵
□□□【ほねの?】をれるしやうばいなり
【右ページ下、台詞】
べらぼうめ
それでは
福助のやうだは
そんなことでは
まだ〴〵
いかぬ
【左ページ下、台詞】
〽だいぶいゝが
もちつと
あんじが
ありやせう
〽かういふばけ
ようではどふだ
すこし
□□□【藤ヵ】四郎と【役者か芝居の登場人物名か】
いふみだ
ろう
現代語訳
昔、佐渡の国の二ツ岩という数千丈もあろうかと思われる洞穴に、朱盤(しゅばん)という化け物が住んで人々を悩ませ、これに従う妖怪が数多くいた。しかし近来は人間も賢くなり、なかなか一通りの化け方では通用しなくなった。とにかく化け物が化け物を恐れさせるほどの恐ろしい化け方を工夫すべきだと、親方朱盤は弟子たちを集めて、相撲の稽古を見るように、それぞれ様々な化け方の稽古をさせた。「それではだめだ、これではだめだ」と叱りつけ、化け物もなかなか骨の折れる商売である。
【右ページ下、台詞】
「べらぼうめ、それでは福助のようだ。そんなことではまだまだいけない。」
【左ページ下、台詞】
「大分良いが、もう少し工夫があるでしょう。」
「こういう化け方ではどうだ。少し藤四郎という者のようだ。」
英語訳
Long ago, in a cave called Futatsui-iwa in Sado Province, which was thought to be several thousand jō deep, there lived a monster called Shuban who tormented people, and many yōkai served under him. However, in recent times humans have become clever, and ordinary methods of shape-shifting no longer work effectively. The boss Shuban decided that monsters must devise such terrifying transformations that they would frighten even other monsters. He gathered his disciples and made them practice various forms of shape-shifting, watching over them like observing sumo practice. He would scold them saying "That won't do! This won't work!" - being a monster was indeed a laborious profession.
[Dialogue from right page below]
"You fool! That looks like Fukusuke! That kind of thing still won't do!"
[Dialogue from left page below]
"That's quite good, but there should be a bit more ingenuity."
"How about this kind of transformation? It looks a bit like Tōshirō."