翻刻!草双紙の世界

コレクション: @chinjuさんと読む草双紙

化物世界夜半嵐 : 3巻 - 翻刻

化物世界夜半嵐 : 3巻 - ページ 9

ページ: 9

翻刻

それよりじやりん【蛇鱗】しう〴〵は【主従は】 さとかくにへ【佐渡国】わたらんと ゑちごのいづもざきまて【新潟県出雲崎町あたり】 ひととびにきたり こゝにて手あし をやすめ十 六里のかいしやうを【海上を】 ひといきにとびこさんと しばしやすらふ内 このかいとう【街道あるいは海道】の雲(くも)かき 風かきともくもをやろう かぜをやろうといふゆへ まだあしよは【足弱】のじやりん かいしやうをとび ゆかんことおぼつか なければくもを やとゐのせゆくべしと しゆつたん【出丹、妖怪の名前】ねだんを 【左ページへ】 するにくもすけどもは よはみへつけこみ いろ〳〵ゆすり けんくわをしかけられ ねがひあるみなれば こらへいるにつき上り すでにじやりんを ちようちやく【打擲】せんと なせば しゆつたん い□□   くた□ 大ぜ□… くも□…【くもかた?】 ばけもの共を あいてに大に はたらきさん〳〵に なげちらす 【右ページ下、台詞】 〽しゆつたんけがを せまいぞ 〽コリヤア    □□らァ【うぬらァ?】     もの     どり     だな 〽なんだもの     どりも【なんだ物盗りも】 すさましいわへ このかいとうの 雲かたのせんせい かぶだァだれ     だと     おも     やァ     がるへ 【左ページ下、台詞】 〽ほんにくもかたせんせい【雲方先生】 おちの人がきいてあきれ           らァ ほてつはらめ【ぼてっ腹め】 〽かわいらしい わかしゆ さんを そんなに いし   めな さん な【いじめなさんな】 □な さん【旦那さん?】

現代語訳

それから蛇鱗(じゃりん)と出丹の主従は佐渡国へ渡ろうと、越後の出雲崎まで一飛びにやって来た。ここで手足を休め、十六里の海上を一息に飛び越そうとしばらく休んでいる間に、この街道の雲かき風かきども(雲を操る者、風を操る者という意味)が「雲を貸そう、風を貸そう」と言うので、まだ足の弱い蛇鱗が海上を飛んで行くことは心もとないので、雲を雇って乗せて行こうと出丹が値段を交渉する。 【左ページへ】 ところが雲かきどもは弱みにつけ込んで、いろいろと法外な要求をして脅し、喧嘩をしかけてきた。願い事があるのだから我慢していたが、ついに堪忍袋の緒が切れて、すでに蛇鱗を打擲しようとしたので、出丹が怒って大勢の雲かき化け物どもを相手に大いに暴れ、散々に投げ散らした。 【右ページ下、台詞】 「出丹、怪我をするなよ」 「こりゃあ、うぬら、物取りだな」 「何だ物取りも、騒がしいではないか。この街道の雲方の先生の頭は誰だと思っているのか」 【左ページ下、台詞】 「本当に雲方先生、落ちぶれた人が聞いて呆れるわ、この太鼓腹め」 「可愛らしい若衆さんを、そんなにいじめなさんな、旦那さん」

英語訳

From there, Jarin (Snake Scale) and Shuttan, master and servant, came in a single flight to Izumozaki in Echigo Province, intending to cross over to Sado Province. Here they rested their limbs, and while taking a brief respite before flying across the sixteen ri of ocean in one breath, some cloud-manipulators and wind-manipulators of this highway offered to "lend clouds" and "lend wind." Since the still-weak Jarin would find it uncertain to fly across the ocean, Shuttan negotiated prices to hire clouds to carry them. [To left page] However, the cloud-manipulators took advantage of their weakness, making various extortionate demands and threats, picking fights. Though they had endured it because they had urgent business, their patience finally snapped when the creatures tried to strike Jarin. Shuttan flew into a rage and fought mightily against the crowd of cloud-manipulating monsters, scattering them thoroughly. [Right page below, dialogue] "Shuttan, don't get hurt!" "Hey there, you lot are nothing but thieves!" "What's this? Even thieves - how noisy! Who do you think is the boss of the cloud-masters on this highway?" [Left page below, dialogue] "Really, Master Cloud-master, even fallen people would laugh to hear this, you pot-belly!" "Don't bully such a lovely young master like that, sir!"