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コレクション: アジアの映画関連資料アーカイブ

名画『キング・オブ・キングス』パンフレット - 翻刻

名画『キング・オブ・キングス』パンフレット - ページ 5

ページ: 5

翻刻

【右頁】 キング・オブ・キングス物語 顧(かへり)みすれば、--吁(あゝ)!思(おも)ひははるかなる二〇 〇〇 年(ねん)の昔(むかし)。--大花園(だいくわゑん)の盛觀(せいくわん)に榮(さか)へ榮(さか)へた 羅馬帝國(ローマていこく)の、しかもその壓政下(あつせいか)に血(ち)に染(にじ)む忍(にん) 苦(く)の日(ひ)を經驗(けいけん)しつつありし「彷徨(さま)よへる猶太(ユデヤ) 【左頁】 人(じん)」の中(なか)にあつて、一 代(だい)の驕兒(けうじ)マグダラのマ リアは、その世(よ)にも蕩麗(たうれい)なる美貌(びぼう)の下(もと)に集(あつま)る 蕩兒(たうじ)を相手(あひて)に日夜(にちや)、 大饗宴(だいけうえん)を張(は)つてゐた。 今(こ) 宵(よひ)も彼女(かのぢよ)は饗宴(けうえん)の光(ひか)りの海(うみ)の中(なか)にゐるが、 何(な) 故(ぜ)かその眉(まゆ)は一 沫(まつ)の憂鬱(いううつ)の翳(かざ)しがあつた。 愛(あい) 人(じん)イスカリオテのユダが、この日(ひ)ごろ、 彼女(かのぢよ) の側(そば)に姿(すがた)を見(み)せぬためであつた。--愛(いと)しい ユダを自分(じぶん)から離(はな)しておく女(をんな)、その女(をんな)はまア どんなに美(うつく)しい女(をんな)であらう?--それが彼女(かのぢよ) の憂鬱(いううつ)であつた。しかし、ユダを彼女(かのぢよ)から引(ひき) き離(はな)したものは、 實(じつ)は美(うつく)しい女(をんな)ではなかつ た。ナザレから來(き)た一人(ひとり)の貧(まづ)しい大工(だいく)、イエ ス・キリストであつたのである。 イエスは尊(たつ)とい神(かみ)の心(こゝろ)を心(こゝろ)とした傳道(でんだう)の行程(こうてい) にあつた。ある時(とき)は死者(ししや)を蘇返(よみがへ)らせ、ある時(とき) は盲(めしひ)に光明(こうめう)を與(あた)へ、 又(また)ある時(とき)は跛(びつこ)を起(た)たしめ て行(ゆ)く行(ゆ)く奇蹟(きせき)を具現(ぐげん)した。 彼(かれ)は今(いま)。一 世(せい)の 翹望(げうぼう)を擔(にな)う救世主(きゅうせいしゆ)であつた。 愛人(あいじん)を奪(うば)ふべく車(くるま)を驅(か)つた驕兒(けうじ)マリアも、 彼(かれ) の内(うち)なる力(ちから)には及(およ)ばなかつた。--當時(たうじ)、 權(けん) 勢並(せいなら)びなき祭司長(さいしのをさ)カヤパはイエスの行動(こうどう)に憤(ふん) 滿(まん)を感(かん)じてゐた。おのれの地位(ちゐ)、 名譽(めいよ)、 富(とみ)に 對(たい)する不安(ふあん)が、 彼(かれ)の聲望(せいぼう)と共(とも)に日(ひ)に日(ひ)に上(のぼ)つ て行(ゆ)くからであつた。--さうして、カヤパ のキリストに對(たい)する飽(あ)くなき迫害(はくがい)がはじめら

現代語訳

【右頁】 キング・オブ・キングス物語 振り返れば、--ああ!思いははるかなる2000年の昔。--大花園の盛観に栄え栄えたローマ帝国の、しかもその圧政下に血に染む忍苦の日を経験しつつあった「さまよえるユダヤ人」の中にあって、一代の寵児マグダラのマリアは、その世にも艶麗なる美貌のもとに集まる放蕩息子を相手に日夜、大饗宴を張っていた。今宵も彼女は饗宴の光の海の中にいるが、なぜかその眉は一抹の憂鬱の影があった。愛人イスカリオテのユダが、このところ、彼女の側に姿を見せないためであった。--愛しいユダを自分から離しておく女、その女はいったいどんなに美しい女であろう?--それが彼女の憂鬱であった。しかし、ユダを彼女から引き離したものは、実は美しい女ではなかった。ナザレから来た一人の貧しい大工、イエス・キリストであったのである。 【左頁】 イエスは尊い神の心を心とした伝道の行程にあった。ある時は死者を蘇らせ、ある時は盲人に光明を与え、またある時は足の不自由な人を立たせて行く行く奇跡を具現した。彼は今、一世の希望を担う救世主であった。 愛人を奪うべく車を駆った寵児マリアも、彼の内なる力には及ばなかった。--当時、権勢並びなき祭司長カヤパはイエスの行動に憤満を感じていた。自分の地位、名誉、富に対する不安が、彼の声望と共に日に日に上って行くからであった。--そうして、カヤパのキリストに対する飽くなき迫害が始められた

英語訳

【Right Page】 The Story of King of Kings Looking back, --ah! Our thoughts reach back to the distant past of 2000 years ago. --Among the "Wandering Jews" who were experiencing days of blood-stained suffering under the oppression of the Roman Empire, which had flourished in the splendor of its great garden, Mary Magdalene, the darling of her generation, was holding grand banquets day and night with the dissolute young men who gathered around her incomparably enchanting beauty. Tonight too she was in the sea of light from the banquet, but for some reason there was a shadow of melancholy on her brow. This was because her lover Judas Iscariot had not shown himself at her side recently. --What kind of beautiful woman could it be who keeps beloved Judas away from her? --This was her source of melancholy. However, what had drawn Judas away from her was not actually a beautiful woman. It was a poor carpenter from Nazareth, Jesus Christ. 【Left Page】 Jesus was on a missionary journey, taking the precious heart of God as his own heart. Sometimes he raised the dead, sometimes he gave light to the blind, and other times he made the lame walk, manifesting miracle after miracle. He was now the savior bearing the hopes of the world. Even the pampered Mary, who had driven her chariot to steal away her lover, could not match his inner power. --At that time, Caiaphas, the high priest of unparalleled authority, felt indignant about Jesus's actions. His anxiety about his own position, honor, and wealth grew day by day along with Jesus's reputation. --And so, Caiaphas's relentless persecution of Christ began.