翻刻
大陽出没図
【図】
云リ是其理ニ当らす其故は金水二星日の前後ニある
時|黒点(こくてん)あらわるゝ事有リ又黒点日輪の中央(ちうわう)を
通リて南北の端(はし)を通る事なし又|出始(ではじめ)の比(ころ)は歩ミ遅(おそ)く中(ちう)
央(わう)は歩ミ早(はや)く終(おは)リには又|遅(をそ)シ然レは是日を遠く離れたる
ものとはしがたし按るに木星の巡リを小星の巡る如く日の
外に游輪有て此輪をまとひ巡(めぐ)るものと見へたり又
黒点ごとに縁(ふち)を薄墨(うすすみ)ニてくまとりたる如くニて而(しか)もあざやか
也按ニ日ニ近きもの故ニ火光ニ包れて其中心の所ばかり
格別黒シと覚ゆ○望気経(ばうきけい)ニ曰漢文帝の時日の中ニ王の
字出ると云|疑(うたがふらく)は此時此文字ニ似(に)たる黒点出る歟又黒点
の辺(ほとり)日光甚|強(つよし)是火は物ニけきして勢ひ増(ます)の理なり
しかりといへども予其|実理(じつり)を知らす後(のち)の賢者(けんしや)を需(もとむ)るのみ
大陰図
【図】
月は只(ただ)円(まとか)なる氷(こほり)の如く也一面に水玉の如きものあり
其水玉|悉(こと〴〵)く凸ニ見ゆれども実は凹キ也半輪之比は此
水玉多く見へ漸々(ぜん〳〵)満(みつ)るに随(したが)ひ少くなり満月には
終に見へず月は元(もと)光リなし日の光リを受て光リを
なすものなれば半輪の比は日光を斜(なゝめ)ニ受(うく)る故ニ凹
所は日光を受す故ニ水玉多く見ゆ満月ニなれば
日ニ向イ合故凹キ底(そこ)迄日光を受るニよつて水玉を見ること
なし又月の中ニうす黒き所あり古へより月の桂(かつら)と号シ
又地の蔭(かげ)ノ移(うつ)るといふ諸書ニ論して説(せつ)区々(まち〳〵)になれども
都(すへて)而附会(ふくはい)の説也|蓋(けだし)シ月は陰精(いんせい)の集(あつま)リ塊(くはい)したる
物にて清濁(せいだく)は造化(ざうくは)の自然なる者也黒き所は
濁(にご)リし水の氷たると覚(おぼ)へて可(か)なり