翻刻
太白星図
【図】
金星は日を軸(しん)にして四十八度の游輪を五百八十三日余
にして一周(ひとめぐり)す依之日より高き時は星の形丸く小さく
見ゆ又日と同天の比は半月の如くにて星中なり日
より下るに随(したが)ひ次第(しだい)に欠(かけ)て終に三日月の如くにして
星大なり是より十日計り過れば至て日ニ近付故ニ
日光に克(こく)して見る事あたはず又半月余を経(へ)て暁(あけがた)ニ
東に出る此時又星大にして三日月の如く也是より百
三十日余りを過て日と同天ニなりて日ニ先立(さきたつ)事凡一
時半計ニて星中也是より百三十日余ニして日より高キの
極(きよく)ニ至て星又丸く小也是より十日計過れば又日光に
隔(へだゝ)りて見へす如此|運旋(うんせん)して一周天す日ニ先キ立時は
俗ニ暁(あけ)の明星(みやうじやう)と云|後(おくる)ル時は宵(よい)の明星といふ也
辰星図
【図】
熒惑星図
【図】
水星は日を軸にして廿四度の游輪あり凡百十五日余
にして此輪を一周す是も太白と同断にして日の前
後になるゆへみちかけ有へき筈(はつ)なれども常に丸く
見ゆる也按ニ水星は日ニ近くして火光に包まれて盈(みち)
欠(かけ)見へがたしと覚ゆ
火星は色赤くして他星(たのほし)ニ異(こと)なり正中に燈火(ともしび)の中の
薄黒(うすくろ)みの如ものあり此星日に向ひあふ時は大也又日に
近き時は小さし日より前後九十度計も去ルときは
星南北へ長(なが)メになる也按ニ火星天は日曜天より
高しといへども大ニひらかさるか日西にありて星中
する時は南北へ長く見ゆ是大きにひらかざる
ものと見へたり