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潮満干之説
潮(しほ)は日月の巡りに随(したが)ひて満干(みちひ)あるなり世人多くは月の潮(しほ)を
推(お)す事を云て日の推事を不云(いはず)日月ともに潮を推(お)すなり
尤月の推す事七歩日の推す事三歩依之則大潮小潮
長潮となるもの也朔日は日月相合ふて旋(めぐ)るゆへ推す事十分にして
大潮となり七八日の比は日月|竪横(たてよこ)より推しあふ故に長潮となる
又十五六日の比は日月地を中に挟(はさ)みて両方よりおすゆへ是又
十分にして大潮となる廿二三日の比は日月|竪横(たてよこ)より推て小潮
となる也|如此(かくのごとく)日月の巡(めぐ)りによつて出来る事ゆへに赤道に近き
国は満干(みちひ)|強(つよ)く両極(りやうきよく)に近きほど満干すくなし蓋(けだし)シ月は
大陰にして潮は小陰なり小陰は大陰に随(したが)ひ集(あつま)るといへども
かへつて大陰の気に推(を)さる依之此地干汐となれは地の下(した)
の国も干汐となると知るべし委くは平天儀を繰り合して
其理を明らむべし
或船人(あるふなひと)の云|潮(しほ)は五十里を隔(へだつ)れば満干(みちひ)替(かは)ると按(あん)ずるに是は
瀬戸内(せとうち)の海(うみ)計(ばか)りの事なり大海ニ而て決(けつ)して替(かは)る事なし
大海に潮|満(みち)来れとも瀬戸口狭(せとくちせば)きにせかれて内海へいまだ
汐満たす次第に内海の潮|満(みち)る頃(ころ)には大海干汐となる然れとも
内海の汐又瀬戸口にせかれて汐を吐(は)く事|遅(おそ)し漸々(やう〳〵)時(とき)
過(すぎ)て内海|干汐(ひしほ)となる也潮の満干(みちひ)替(かは)るとは此理(り)也