翻刻
潮を淡水になす法幷図
釜の中に潮(うしほ)を入れ釜(かま)の蓋(ふた)ニ
桶(おけ)のそこに穴をあけ廻り三四寸
長サ五六寸の竹をさしこむ尤
桶の内へ五六歩計ぬき出し置
右桶のそこの脇(わき)へ細竹(ほそたけ)のようを
能(よ)く通(とを)してさしこみ又下ニ桶を
受置(うけおけ)は此細竹へ真水(まみづ)下るなり
又上の桶のふたには鍋(なべ)に潮を入レ
【図】
此大竹桶の 此細竹へ真水
内へ五分はかり 下ル也此竹は
ぬき出す ぬき出さず
此鍋ニも潮水を
入る温れは毎ニ 此釜の中へ潮を
替へへし 入れて煮る也
置(おき)図のごとく下より焚(た)くなり右|鍋(なべ)の潮温(うしほあたゝ)まれば何べんも
替(かへ)べし左なくては真水下る事すくなし如斯(かくのことく)すれば凡
潮水(しほみづ)一斗ニて真水(まみづ)五升を得(ゑ)るなり
潮(うしほ)にて食(めし)を焚くには先ツ前日より米を潮にてよく洗(あら)ひ潮に
漬置焚(つけおきたか)んと思ふ時分(じぶん)にいかきへ上ケ其まゝ桶(おけ)ニ入レ能(よく)ふたを
仕て右桶の下の細竹をぬき穴をとくとつめ置て焚くべし
食常(めしつね)の如くにして潮はゆき事なし
此法は熊野の喜多元通といふ人の文に橘南谿先生の奥書
有ル壱枚摺のものを書写して爰に録するものなり