翻刻
べからず
惣(さう)じて湯治する人。別(べつ)して。身(み)
持(もち)心得(こゝろへ)が大|事(じ)なり。いかにと
なれば。湯にて五体(たい)の血脈(けつみやく)
を。おだて狂(くる)はし。筋(すじ)骨(ほね)ゆる
み。表気(へうき)薄(うす)く成もの也。忽(たちまち)
小便(せうべん)赤(あか)く。或は腹くだり。気
根(こん)よわり。或は酒(さけ)のゑひつよ
く。音曲(おんぎよく)声(こへ)はりがたく。風邪(ふうじや)
入りやすきにてしるべし。慎(つゝし)まざ
るべけんや。然るに引かへて。やゝ
もすれば。大|食(しよく)大|酒(しゆ)し。或は
酔(えひ)ぐるひし。或は下駄(げた)ひしやく
紛失(ふんしつ)したる等(とう)より。事|起(おこ)り
て。喧嘩(けんくは)し。のゝしる。大に不養(ふよう)
生(ぜう)なり。それさへあしきに。人
目をしのんで。色(いろ)にくるひ。た
のしむ人あり。且(かつ)夜分(やふん)いづれ
の湯も。男女|入込(いりこみ)なり。《割書:あらゆに|男女を》
《割書:分るは亥|の刻限也》是を心がけて。通(かよ)ふも
あり。以(もつて)の外のあやまり。不埒(ふらち)
の至(いたり)。言語同断(ごんごどうだん)也。かやうに不(ふ)
心得(こころへ)なる人は。其病(やまひ)功(こう)なきの
みか。必(かならず)あたる。甚(はなはだ)しきは。血(ち)を