翻刻
吐(はき)て死(し)す。大に戒(いま)しむべき也。
よつて。色欲(しきよく)をもつて禁(いましめ)と
し。惣体(さうたい)の保養(ほうよう)心得(こゝろゑ)をもつ
て。又一つとして。以上四つなり
○論(ろん)
ある人|問(とふ)ていはく。中の湯は
毒湯(どくゆ)也。入(いる)事(こと)なかれといへり。
然るに中の湯に入て。無恙(つゝがなき)人
あるはいかん
答(こた)ふ。それはよからぬがてん也
毒湯(どくゆ)といへばとて。砒霜石(ひさうせき)
斑猫(はんめうの)如(ごと)きの毒(どく)にはあらず。
夫(それ)温泉(おんせん)は其(その)性(せう)。温(うん)にして。能(よく)
温(あたゝ)め。気血(きけつ)を巡(めぐ)らすを。上と
す。あらゆ是なり。其|性(せう)。冷(れい)に
して。上より包(つゝ)み。癒(いや)すを。下
とす。中の湯是なり。尤(もつとも)中の
湯。腫物(しゆもつ)切疵(きりきず)等(とう)癒(いや)すにおい
て。甚(はなはだ)重宝(てうほう)なりといへども。是
は畢竟(ひつきやう)。外科(げくは)の細工(さいく)にも成べし。
かの上より。つゝみ閉(とぢ)て。一期(いちご)病(やまひ)
と成(なり)。或(あるひ)は。命(いのち)を危(あや)うくせんに
は。かへがたし。たとひ。無病(むびやう)の人
といへど。気血(きけつ)を巡(めぐ)らすこそ。