翻刻
又ある所に。三|才(さい)の小児(せうに)。頭瘡(づさう)
甚く成て。目(め)口(くち)ふさがり。背(せなか)に
つたひ。母(はゝ)のむねにうつりて。母(ぼ)
子(し)難義(なんぎ)するあり。其|隣(となり)の
人。爰(こゝ)に湯治(たうぢ)しけるついで。
此事を亭主(ていしゆ)にはなしけれ
ば。亭主|指図(さしづ)に付。中の湯を
汲(く)み。竹筒(たけのつゝ)に入。はる〴〵持帰(もちかへり)
て。彼(かの)頭瘡(づさう)にひたし付けれ
は。二三日の中。瘡(くさ)悉(こと〴〵く)癒(いへ)たり。
子(こ)も母(はゝ)も悦(よろこ)び限(かぎり)なし。然る
所。俄(にはか)に小児(せうに)。病おこり【た、の添え字か】。全身(せんしん)
紫色(むらさきいろ)に成(なり)て死(し)す。りやうじ
さま〳〵尽(つく)しけれども験(しる)し
なし。中の湯(ゆ)の害(かい)明白(めいはく)也。
毒湯(どくゆ)と云(い)はざらんや
謝温志之図(しやをんしのず)
右|近年(きんねん)作(つく)る所にて痔疾(ぢしつ)有(ある)
人|肛門(こうもん)にあて湯(ゆ)に打(うた)せる具(ぐ)
なり望(のぞみ)ある人は旅宿(りよしゆく)にて
借(かり)用(もち)ゆべし