翻刻
○湯嶋雑話(ゆしまざつわ)
湯嶋(ゆしま)の宿(やど)へ着(ちやく)して。直(じき)に足(あし)
洗ひとて。湯へ行(ゆく)もよし。但(たゞし)此
時は実(まこと)に足(あし)あらふ計(ばかり)にして。
湯(ゆ)に入事なかれ。一夜|休息(きうそく)
し。翌日(よくじつ)より入てよし
用意(ようゐ)の金銀(きんぎん)。脇指(わきざし)其外。
大(たい)切(せつ)の物。一つに包(つゝみ)。名札(なふだ)を付
て。亭主(ていしゆ)へ預(あづけ)てよし。さもな
き時は。用事に立(たつ)か。或は湯へ
行たる。留主(るす)の間。物見へざる
事もあるべきなり
着(つき)候。翌朝(よくてう)ゟ。自分(じぶん)世帯(せたい)にす
るか。たき出しにするかなり。
自分世帯(じぶんせたい)にする時は米(こめ)味(み)
噌(そ)。油(あぶら)塩(しほ)醤油(しやうゆ)の類(るい)。其外
一切(いつさい)宿附(やとつけ)の商人(あきんど)より。通(かよ)ひ
にて入るなり。又たき出し
といふは。米を客(きやく)より。調(ととのへ)て
わたし。宿(やど)より是をたきて。
廉?末(そまつ)の一汁(いちじう)一|菜(さい)を。そへて。