翻刻
|土地全躰(とちぜんたい)山の|谷間(たにま)にして。一
|筋(すじ)の町。|長(なが)く二ツにきれて。中
に|野(の)をへだてたり。北一里半
出れば|北海(ほつかい)なり。さる故にや。
|雲気(うんき)つよく。|雨(あめ)しげく。道中
山川たへず。されば。|春(はる)は|漸(ようやく)|暖(あたたか)
に成を|待(まち)。秋は|帰路(きろ)|冷気(れいき)に。
|障(さわ)るまじき紀を|考(かんがへ)て。|行(ゆく)
べきなり
○|温泉(をんせん)|繁昌(はんしやう)の|由来(ゆらい)
|温泉(をんせん)|都合(つごう)五ツ有。中の町さし
口に有を。あら|湯(ゆ)と言。|次(つき)を中
の湯といふ。かせゆとも言 |次(つぎ)を|常湯(しやうゆ)
といふ。又上の町|右側(みぎがは)にあるを。
|御所(ごしよ)の|湯(ゆ)といふ。|左手(ひだりて)に入て
有を。まんだら湯といふ。|都(つ)
|合(がふ)五ツなり。今一ツ陣やの湯と言あり。殿のゆと言
て。常の人入ことならず。故にもらす。又非人ゆと言あり |古来(こらい)
|当所(たうしよ)の|湯(ゆ)に。心を|寄(よせ)たる|医(い)
|人(じん)有といへども。正当の|説(せつ)なく。
|剰(あまつさへ)|良湯(よきゆ)を。あらしとて。いみ
|恐(をほ)れ。|毒湯(どくゆ)を|良湯(よきゆ)なり
とて。|様美(せうび)せしも有とかや。
然るに|元禄(げんろく)の|比(ころ)。|京都(きやうと)|艮山(ごんざん)