翻刻
当寺(たうし)昔(むかし)はいさゝかの庵室(あんしつ)なりしか寛永(くはんえい)年間 大樹(たいしゆ)遊猟(いうれふ)の砌(みきり)少(すこし)く御不予(おんふよ)
にあらせられしかは此(この)寺内(しない)に休(やすら)はせたまひ庭前(ていせん)の井(ゐ)の水(みつ)をもて御薬(おんくすり)を服(ふく)し
給ひしに須臾(しゆゆ)にして常(つね)にならせ給ひしより此井(このゐ)に長命水(ちやうめいすい)の号(な)を賜(たま)はり
寺(てら)の号(な)をも改(あらた)むへき旨(むね) 台命(たいめい)あり爾来(しかりしより)長命寺(ちやうめいし)と称(しよう)す 《割書:昔(むかし)は常泉寺(しやうせんし)|と云しなり》
殊更(ことさら)当寺(たうし)は雪(ゆき)の名所(なところ)にして前(まへ)に隅田河(すみたかは)の流(なかれ)をうけて風色(ふうしよく)たらすといふことなし
牛頭山弘福禅寺(きうとうさんこうふくせんし) 牛御前宮(うしのこせんくう)の東(ひかし)に隣(とな)る此辺(このあたり)を須崎(すさき)といふ 《割書:旧(もと)洲崎(すさき)|に作(つく)る》 黄檗派(わうはくは)
の禅室(せんしつ)にして落陽(らくやう)万福寺(まんふくし)を模(うつ)す本尊(ほんそん)は唐物(たうふつ)の釈迦如来(しやかによらい)左右は迦葉(かせふ)
阿難(あなん)なり開山(かいさん)鉄牛和尚(てつきうおしやう)延宝(えむはう)紀元(きけん)癸丑 創造(さうさう)す毎歳七月十五日 大施餓鬼修行(たいせかきしゆきやう)有(あり)
【挿し絵】
大
雄
殿
仏殿(ふつてん) 《割書:額(かく)は|二重(にちゆう)》
《割書:家根(やね)に掲(かく)る|隠元(いんけん)の筆(ふて)》
【挿し絵】
大威徳
《割書:本尊(ほんそん)の上(うへ)に|掲(かく)る同筆》
【挿し絵】
覚天日月天?晦祖灯■■■
■地雲?雷普?露林木尽華栄?
聯(れん)《割書:本尊(ほんそん)の|左右の》
《割書:柱(はしら)に掲(かく)る|木庵(もくあん)の》
《割書: 筆なり|》
【挿し絵】
■■■……
■■■……
聯(れん)《割書:同し|左右の》
《割書:柱(はしら)に並(なら)へ|掲(かく)る高泉(かうせん)》
《割書:の筆(ふて)なり|》
【挿し絵】
見相傾身敢保未■法相?
拝?■布地自然■界黄金
聯(れん) 《割書:同し|前(まへ)の》
《割書:柱(はしら)に掲(かく)る|鉄牛(てつきう)の》
《割書: 筆(ふて)也|》
木犀 《割書:仏殿(ふつてん)|の前(まへ)》
《割書:左右に分(わかち)| 殖(うへ)たり》
刹竿旗(せつかんき) 《割書:同し殿(てん)|前(せん)の左右》
《割書:にたつる|》
【挿し絵】
選
仏
場
座禅堂(させんたう) 《割書:仏殿(ふつてん)|の左》
《割書:に並(なら)ふ軒(のき)に掲(かく)る所|の額(かく)は木庵(もくあん)の》
《割書: 筆なり|》
【挿し絵】
大冶錬成未堪入選
虚空粉碎方許声■
聯(れん)《割書:同し左|右の柱(はしら)》
《割書:に掲(かく)る|鉄牛(てつきう)筆》
【挿し絵】
慈
親
堂
牌堂(はいたう)《割書:座禅堂(させんたう)に並(なら)ふ|地蔵尊(ちさうそん)そ安(あん)す》
開山堂(かいさんたう) 《割書:開山(かいさん)鉄牛和尚(てつきうおしやう)の肖像(せうさう)を安(あん)す扁(へん)して慈観(しくはん)といふ|此和尚の伝(てん)はこゝに略(りやく)す》
【挿し絵】
一株老桂長垂蔭
万斛天香遠襲人
聯(れん) 《割書:同し|左右の》
《割書:柱(はしら)に掲(かく)る|鉄牛(てつきう)筆》
食堂(しきたう) 《割書:仏殿(ふつてん)の|右に》
《割書:並(なら)ふ額(かく)は鉄牛(てつきう)の|筆なり》
【挿し絵】
聖
相
《割書:此堂(このたう)の軒(のき)|下に木魚(もくきよ)》
《割書:鐘版(しやうはん)等を|かくる》
【挿し絵】
海積山堆摩詰家風真広大
日来月往衲僧法■永殷充
聯(れん) 《割書:同し|堂(たう)に》
《割書:掲(かく)る南岳(なんかく)|悦山(ゑつさん)の筆なり》
【挿し絵】
浴
室
浴室(よくしつ)
《割書:額(かく)は鉄(てつ)|牛(きう)の筆》
【挿し絵】
弘?
福
寺
天王殿(てんわうてん) 《割書:内に布袋(ほてい)|帝釈(たいしやく)四天(してん)》
《割書:王(わう)の像(さう)を安(あん)す額(かく)|は二重家根(にちゆうやね)に掲(かく)る木庵(もくあん)の》
《割書: 筆|》
【挿し絵】
道恭玉麟現瑞
林■■鳳■■
聯(れん) 《割書:同し|堂(たう)の》
《割書:柱(はしら)に掲(かく)る|鉄牛(てつきう)の筆》
【挿し絵】
天
王
閣
《割書:同し堂(たう)の二階(にかい)|世(うしろ)の方(かた)に掲(かく)る》
《割書:額(かく)筆者(ひつしや)上に|おなし》
経蔵(きやうさう) 《割書:内に観音の像を|安す堪堂(かんたう)の筆》
《割書:せる聯額(れんかく)ありしか朽(くち)たりと|て今なし》
【挿し絵】
大■■拝仏魔■須真気
高懸宝鐙故■終■■身
《割書:方丈|聯鉄》
《割書:牛筆也|》
【挿し絵】
鐘
楼
鐘楼(しゆろう) 《割書:座禅堂(させんたう)|の前に》
《割書:並(なら)ふ額(かく)は鉄牛(てつきう)|の筆なり》
《割書:此鐘(このかね)の名は高泉(かうせん)|和尚の撰文(せんふん)なり》
《割書:般若心経(はんにやしんきやう)及ひ三陀(さんた)|羅尼(らに)等を細書(さいしよ)す》
鎮守宮(ちんしゆのみや) 《割書:天照(てんせう)春日八幡(かすかはちまん)およひ弁財天(へんさいてん)稲荷(いなり)|塩竈明神(しほかまみやうしん)等(とう)の諸神(しよしん)を崇(あか)む》
天桂石(てんけいせき) 《割書:経蔵(きやうさう)の前の石の|手水鉢(てうつはち)なり》