翻刻!草双紙の世界

コレクション: @chinjuさんと読む草双紙

化物和本草 : 3巻 - 翻刻

化物和本草 : 3巻 - ページ 13

ページ: 13

翻刻

ひとのせがれ ふしよぞんにて ゆうきやうにふけり すじつ【数日】いゑにかへらす 父母なげきに せまりこんゐの ひとをたのみ ごくろうにては 候へどもきさま【貴様: 尊称】 けうくん【教訓≒意見】なされて なにとぞとせがれを いゑにつれかへりくださる べしとたのまれすなわち ゆうきやうのちにゆきて かのせかれにあいつれ かへらんときやうくんを もちゆるときかの せがれのいへるは ずいぶんきこうさま【貴公様】の 御ゐけんにしたがい すみやかにかへり申べし さりながらまづ御 酒(しゆ) いつさんめしあがつて くだされとすゝめられ したぢ【下地≒本来】はすきなり 一はいのみ二はいのみ ついにはその 【左ページ】 せがれとゝもに ふぎやうせきを なしりやうにん ともにいゑにかへるを わする【忘る】これをなつけて みいらとりの みいらになる とは申なり これはな はだひとの こたるもの にはどく やくなり このみいらは ずいぶんおりを みやわせ【機会を見計らって】 たび〳〵 いけんでおろし さいまつして もちひずは【用いずば】 くすり には なるまい

現代語訳

人の息子が不承知にて遊興に耽り、数日家に帰らない。父母が嘆きに迫られ、懇意の人を頼み、「ご苦労ではございますが、あなた様に教訓していただいて、なんとか息子を家に連れ帰ってくださいませ」と頼まれた。そこですぐに遊興の場に行って、かの息子に会い、連れて帰ろうとする時に教訓を用いると、かの息子が言うには、「ずいぶん貴公様のご意見に従い、速やかに帰り申そう。されどまずお酒を一杯召し上がってください」と勧められ、下地は酒好きなり、一杯飲み、二杯飲み、ついにはその 【左ページ】 息子とともに不行跡を行い、両人ともに家に帰るのを忘れる。これを名付けて「ミイラ取りがミイラになる」とは申すなり。これは生半可な人の怠る者には毒薬なり。 このミイラは、ずいぶん折を見計らって、たびたび意見で下ろし、細末して用いなければ、薬にはなるまい。

英語訳

A man's son refuses to listen and indulges in pleasure-seeking, not returning home for several days. The parents, pressed by grief, rely on an acquaintance and request: "Though it may be troublesome, please give him moral instruction and somehow bring our son home." So immediately going to the place of entertainment to meet that son, when trying to bring him back and employing moral instruction, that son says: "I shall certainly follow your honorable opinion and return promptly. However, please first have a drink of sake." Being urged thus, and having a natural fondness for drink, he drinks one cup, drinks two cups, and finally 【Left Page】 together with the son engages in misconduct, both forgetting to return home. This is called "the mummy hunter becomes a mummy." This is poison to half-hearted, lazy people. This mummy, if one carefully watches for the right opportunity and frequently applies moral instruction to break it down and use it in powdered form, it might become medicine.