翻刻!草双紙の世界

コレクション: @chinjuさんと読む草双紙

化物和本草 : 3巻 - 翻刻

化物和本草 : 3巻 - ページ 15

ページ: 15

翻刻

両頭(りやうとう)の筆(ふで) りやうとうのふでは つねに詩人(しじん)うたよみ はいかいしのふところに かくれすみ はなのとき つきのころは おゝくあらわれ いでしきし たんざくを【色紙・短冊を】 とり くらふ また ひとの あふぎ【扇】 などを みると みだりに とり くらふ なり ひうどろ 〳〵〳〵〳〵 【右下右】 これは ふしぎな こと 【右下中】 あれ〳〵 りやう とうのふでが すずりのうみから てんじやう します【天上します、昇天します】 【左ページ】 手の長(なか)き猿(さる) ゑんかうざるは水の月をとらんとし このてながざるはさゐふの かねをとらんとすなくこへぶつぽうそうと いふとりににてこのかいどうはぶつそう〳〵【この街道は物騒】となく みやこやまざきの 山中にすむそのかみはやの かん平といふかりうど【お軽勘平の早野勘平】      てつぽうにて        しとめたり 【左下】 さて〳〵てなかい【手長い】さるじや【猿じゃ】 てながいのやすたり 三十八もんと きている

現代語訳

両頭の筆 両頭の筆は、常に詩人や歌詠み、俳諧師の懐に隠れ住んでいる。花の季節や月の美しい頃には多く現れ出て、色紙や短冊を取って食らう。また、人の扇などを見ると、むやみに取って食らうのである。 ひゅうどろ〜〜〜 【右下右】 これは不思議なこと 【右下中】 あれあれ、両頭の筆が硯の海から天上します(昇天します) 【左ページ】 手の長い猿 猿猴(えんこう)という猿は水中の月を取ろうとするが、この手長猿は財布の金を取ろうとする。鳴き声は「仏法僧」という鳥に似て、この街道は「物騒物騒」と鳴く。 都山崎の山中に住む。その昔、早野勘平という猟師が鉄砲で仕留めた。 【左下】 さてさて手の長い猿じゃ。手長の安足駄三十八文と着ている。

英語訳

The Double-Headed Brush The double-headed brush always hides and dwells in the bosoms of poets, verse composers, and haikai masters. During flower season and beautiful moonlit times, many appear and devour colored paper and poem cards (tanzaku). Also, when they see people's fans, they indiscriminately snatch and devour them. Hyūdoro~~~ 【Lower right】 This is a strange thing 【Lower right center】 Look, look! The double-headed brush is ascending to heaven from the ink sea of the inkstone! 【Left Page】 The Long-Armed Monkey The enkō monkey tries to catch the moon's reflection in water, but this long-armed monkey tries to steal money from purses. Its cry resembles that of the "buppōsō" (three-jeweled bird), and along this highway it cries "bussō-bussō" (dangerous-dangerous). It lives in the mountains of Miyako Yamazaki. Long ago, a hunter named Hayano Kanpei shot it down with a gun. 【Lower left】 Well, well, what a long-armed monkey! It's wearing long-armed ashida (wooden clogs) worth thirty-eight mon.