翻刻
【挿し絵内囲み】山(やま)の神(かみ)の角(つの)
○やまのかみのつのといふは
人のにようぼうにはへる
つのなりぼんぶのまなこには
みへねどもおそろしき
つのなりこれみなこゝろの
おにのしよゐにてりんき
しつとの
はなはだ
しきがつのつて
かやうのつのを
はやす
おそるべし
つゝしむべし
【挿し絵内の囲み】三足(さんぞく)の猫足(ねこあし)
○さんぞくの
ねこあしはつねは
しばゐにすみ
つきみ【月見】とし
わすれ【年忘れ】などの
ざしきへ
おり〳〵
いづる
なり
なくこゑ
いたつて
おもし
ろく
しのぶ
いらしやん
せんかいにやあ
〳〵と
【左ページへ】
なく
【挿し絵内囲み】頭(あたま)の黒(くろい)鼠(ねづみ)
○あたまの
くろいねづみは
あしかといふ
けものにてひるは
いねむりばかり
なし
よるになると
目をさらのごとく
に
して
あ
ら
わるゝ
しつぽこ【卓袱(しっぼく)料理、またはそのテーブル】などを
かきさがしかれいの
ほねなぞを
しやぶり
いろ〳〵しよくもつを
あらす
またよふけに
しやみせんをかぢるなり
【右ページ下段、台詞】
さて
〳〵
めづら
しい
ものじや
【左ページ下段、台詞】
いちどごろふし【ご覧じ】
ますれば
まつだいの
おはなしの
たねに
なり
ま
す
現代語訳
【挿絵内囲み】山の神の角
○山の神の角というのは、人の女房に生える角である。凡夫の目には見えないが、恐ろしい角である。これはみな心の鬼の仕業で、嫉妬や嫉妬心が激しくなってこのような角を生やす。恐れるべし、慎むべし。
【挿絵内の囲み】三足の猫足
○三足の猫足は常は芝居に住み、月見や年忘れなどの座敷へ時々出てくる。鳴き声は大変面白く「忍ぶいらっしゃんせ、千界にゃあ〜」と鳴く。
【挿絵内囲み】頭の黒い鼠
○頭の黒い鼠は、怠け者という獣で、昼は居眠りばかりしている。夜になると目を皿のようにして現れる。
卓袱料理などをかき回し、カレイの骨などをしゃぶり、色々な食べ物を荒らす。また夜更けに三味線をかじる。
【右ページ下段、台詞】
さてさて、珍しいものじゃ。
【左ページ下段、台詞】
一度ご覧になれば、末代のお話の種になります。
英語訳
【Caption within illustration】The Horns of the Mountain God
○The horns of the mountain god are horns that grow on people's wives. Though invisible to the eyes of ordinary mortals, they are fearsome horns. These are all the work of demons in the heart - intense jealousy and envy cause such horns to sprout. They should be feared and one should be cautious.
【Caption within illustration】The Three-Legged Cat Feet
○The three-legged cat feet usually dwell in theaters and occasionally emerge at moon-viewing parties and year-end gatherings. Their cry is extremely amusing: "Shinobu irasshanse, senkai nyaa~" they cry.
【Caption within illustration】The Black-Headed Mouse
○The black-headed mouse is a lazy beast that only dozes during the day. When night falls, it appears with eyes wide as saucers.
It rummages through shippoku feast tables, gnaws on flounder bones, and ravages various foods. It also gnaws on shamisen late at night.
【Lower right page, dialogue】
Well, well, what a curious thing!
【Lower left page, dialogue】
If you see it once, it will become a story to tell for generations.