翻刻!草双紙の世界

コレクション: @chinjuさんと読む草双紙

化物太平記 3巻 - 翻刻

化物太平記 3巻 - ページ 4

ページ: 4

翻刻

【囲み】発端 さくしやの ゆめを見る やつもよくある しゆかう【趣向】ふるけれ ども【古けれども】こんどはほん とうのゆめからできた むしやづくしいやとも かゝねばならぬといふは まづさくしや 一九がかたへ くささうしの はんもと 山口や来り ことしは むしやづくし をばけもの にしてかいると【蛙と】 へびと【蛇と】きめ くじり【注】三虫の あらそひを かいてくれろとの ちうもん一九れいの よくばりなんでも のみこみ山ことしはわた くしのさくりやう【作料、原稿料】もあげ ましたからとりわけたんと かゝねばなりやせぬさつそく あんじて見ませふとうけやつた 【注:気持ちの悪いナメクジ(なめくじら)の意味】 【左ページへ】 ところが いつかうに しゆこう つかずあんじ くたびれて とろ〳〵と まどろみし ゆめのうちに やつはり 三虫の あらそひ を見て これはばけ ものづくし よりむし づくしの いくさを かゝんと おもひ つきその しゆかうに けつちやく     する 【右ページ下、女性の台詞】 もしないゝかげん にもふおきな されおやしきの おちかさんから おふみが きやした わつちがこゝに こうしていると どふかかみさま【かみ様、奥さん】 のよふでがい ぶんが わる い 【左ページ下、一九の台詞】 〽サア〳〵 おとぼう だれそ よびに やつ  て くんなお しゆんか おはま かはん 次にとふ 四郎 か 【以下刷りの違う本より破れている部分を補う】 よか ろふ そして こよいは れいのところを やめにしてたまやの みちとせがうら にしよふか大 もんじやの ふすまぢか たゞしは せうろうの おの山と   ひね ろふかとねごとなればでほうだい いろ〳〵なごたくをぬかす フウ〳〵ムニヤ〳〵〳〵 【廊下と寝言なれば出放題、色々な御託を抜かす】 【廊下に出放題なのは幽霊であろうか】

現代語訳

【囲み】発端 作者が 夢を見る やつもよくある 趣向で古いけれど も今度は本 当の夢からできた 虫づくし嫌とも 書かねばならぬというは まず作者 一九のもとへ 草双紙の 版元 山口屋が来て 今年は 虫づくしを お化けものに して蛙と 蛇と決め ナメクジ三虫の 争いを 書いてくれろとの 注文一九例の 欲張りなんでも 飲み込み今年は私 の作料(原稿料)もあげ ましたからとりわけたんと 書かねばなりません早速 考えて見ましょうと受けた ところが 一向に 趣向が つかずに考え 疲れて とろとろと まどろんだ 夢のうちに やはり 三虫の 争いを 見て これは化け 物づくしより 虫づくしの 戦争を 書こうと 思いつき、その 趣向に 決着する 【右ページ下、女性の台詞】 もしいい加減 にもうお起きなさい 奥様のお近さんから お手紙が 来ました 私がここに こうしていると どうか奥様 のようで具 合が 悪い 【左ページ下、一九の台詞】 さあさあ お供は 誰か 呼びに やって くれ お春か お浜か はたまた 次に藤 四郎か よかろう そして 今夜は 例のところを やめにして多摩屋の 道俊が裏 にしようか大 門近の 襖近 ただしは 娼楼の お乃山と   ひねろうか と寝言なれば出放題 色々な御託を並べる フウフウムニャムニャ

英語訳

【Framed】Opening The author having a dream is also a common device, though old- fashioned, but this time it came from a real dream about insects that must be written whether one likes it or not, which is First, to author Ikku came the publisher of kusazōshi (popular fiction) Yamaguchiya, saying this year make the insect collection into monsters deciding on frogs, snakes, and slugs - write about the conflict of these three creatures. This order - Ikku, with his usual greed, swallowing everything, said "This year I've also raised your writing fee, so you must write especially well. I'll think about it right away" and accepted. However, no ideas came at all, and tired from thinking, he dozed off drowsily. In his dream he indeed saw the conflict of the three creatures, and thought "Rather than a monster collection, I'll write about a war of insects," hitting upon this idea and settling on this concept. 【Right page bottom, woman's dialogue】 Listen, get up already! A letter has come from Lady Ochika. With me staying here like this, it somehow looks bad, as if I were the mistress of the house. 【Left page bottom, Ikku's dialogue】 Come, come, call someone to be an attendant - Oharu or Ohama, or perhaps Tōshirō next? That would be good. And tonight let's skip the usual place and go to the back of Tamaya's Michitoshi, or near Ōmon's sliding doors, or perhaps visit Onoyama of the pleasure quarters... Since these are sleep-talking, he speaks freely, spouting all sorts of nonsense: "Huff huff, mumble mumble..."