翻刻!草双紙の世界

コレクション: @chinjuさんと読む草双紙

化物太平記 3巻 - 翻刻

化物太平記 3巻 - ページ 6

ページ: 6

翻刻

こゝに三かはの【三河の】 くにおかざき 川のほとりに すむかつぱあり としひさしく こうろへて【劫臈へて】 いろ〳〵に じゆつを もつてみを へんじ ばけもの なかまの かしらと なり手下の ばけもの大 ぜいをしたがへ きりどり ごうどう【切取強盗】 をなして よをわたり けるある夜 おかざきのはしの うへをとふり けるとき ひとつの 小へびはしの 上にまるく なりてよく ねいりいたる をかつぱ 【左ページへ】 おもわず しりをゝ【尻尾を】 ふんでとふり ければへび 目をさまし はらをたて 何ものなれば わがしりをゝ ふんでことはり なしにゆく ぞといふ かつぱきゝて さて〳〵 小へびの ぶんとして しほらしくも とがめたり われといつ しよにきたる べしみどころ あるやつわが 手下になし つかつてくれんと  かの小へびを   めしつれて     かへりける 【右ページ下、台詞】 〽めくら へびに おぢづ といふ から めくら なら ゆるして やろふが その大き なめで そゝうとは いはせ ぬ〳〵 【以下、かすれている部分を刷りの違う本より補う】 〽こいつはいちばん あやまつたいなり まちりやうてを ついてハイ〳〵 【左ページ下へ】 おわび こと 申上  ます 〽なん   ぼ 小へび でも ながい もの  には まかれ  かちだ りやう   けん さつしやい

現代語訳

ここに三河の国岡崎川のほとりに住む河童がいた。年久しく修行を積んで、いろいろな術を身に付けて変化し、化け物仲間の頭となり、手下の化け物を大勢従えて、追い剥ぎ強盗をなして世を渡っていた。ある夜、岡崎の橋の上を通りかかったとき、一匹の小蛇が橋の上で丸くなってよく眠り込んでいるのを、河童がうっかり尻尾を踏んで通りかかったので、蛇は目を覚まして腹を立て、「何者であるか、私の尻尾を踏んで断りもなしに行くのか」と言う。 河童はこれを聞いて、「さてさて小蛇の分際として、しおらしくも咎めたものだ。我と一緒に来るがよい。見所のあるやつだ。我が手下にして使ってくれよう」と、かの小蛇を連れて帰った。 (台詞) 「盲蛇に怖じずと言うから、盲なら許してやろうが、その大きな目でそそうとは言わせぬぞ」 「こいつは一番謝りたい。待っていて、手をついてはいはい、お詫びのことを申し上げます」 「なんぼ小蛇でも、長い物には巻かれよ。勝ち誇って、よくよく見なさい」

英語訳

Here lived a kappa by the Okazaki River in Mikawa Province. Having practiced for many years, he had mastered various magical arts and transformations, becoming the leader of monster companions. He commanded many monster subordinates and made his living through highway robbery and theft. One night, when passing over Okazaki Bridge, he found a small snake coiled up and sleeping soundly on the bridge. The kappa inadvertently stepped on its tail as he passed by, whereupon the snake awoke in anger and said, "Who are you to step on my tail and pass by without apology?" Hearing this, the kappa said, "Well, well, for a mere small snake, you certainly reproach me with spirit! Come with me. You're one with potential. I'll make you my subordinate and put you to work." So saying, he took the small snake home with him. (Dialogue) "They say 'a blind snake fears nothing,' so if you were blind I'd forgive you, but I won't let you claim carelessness with those big eyes of yours!" "This one is most apologetic indeed. Please wait, let me bow down and say 'yes, yes,' I humbly apologize to you." "No matter how small a snake, one must yield to longer things. You've won this time - look closely and learn!"