翻刻!草双紙の世界

コレクション: NDL鳥居清長

千里走虎之子欲 2巻 - 翻刻

千里走虎之子欲 2巻 - ページ 9

ページ: 9

翻刻

【右ページ】 竹八てまへの りやうけんにも いかずたんな でら【旦那寺・檀那寺】のおしやうさまに いちぶしぢうの よふすを はなし けれは それは とらに のつてあるくが よかろふ これいじんと【?】 いふせんにん【仙人?】 とらをあいし のつた事は きいた 事も なし ふかん ぜんじ【豊干禅師】は とらをこたつの【虎を炬燵の】 やふにより【様に寄り】 かゝつて ねるかすき【寝るが好き】 しやふき【鍾馗】が とらに 【左ページ】 のつて あるかれた きさまか てつほう【鉄砲、嘘の隠語】 だと おもはぬよふに せつしう【雪舟】のふでのとらのりの せうき【鍾馗】を見せ ませうのられぬ 事はなさそふなもの もんじゆは【文殊は】 しゝにのつてござるふけんは【獅子に乗ってござる。普賢は】 ざう【象】にのらつしやると ものしりかほにとはなされ けれども仁田の四郎が いのしゝはこれよりのちの 事と見へたり 【右ページ 中ほど】 うらしま太郎は かめにのつたが みづこゝろか なければ あぶない もの とらは おち た所 が むま【馬】より せいかひくい 【左ページ 右下】 いかさま【なるほど】 おさ よふで こざります

現代語訳

【右ページ】 竹八は手前の了見にもいかず、檀那寺の和尚様に一部始終の様子を話した。すると「それは虎に乗って歩くのがよかろう。これは何という仙人が虎を愛して乗った事は聞いた事もない。豊干禅師は虎を炬燵のように寄りかかって寝るのが好きで、鍾馗が虎に」 【左ページ】 「乗って歩かれた。貴様が嘘だと思わぬように、雪舟の筆による虎に乗った鍾馗の絵を見せよう。乗れぬ事はなさそうなものだ。文殊は獅子に乗っておられる。普賢は象に乗っておられる」と物知り顔に話された。けれども仁田の四郎が猪に乗ったのは、これより後の事と見えた。 【右ページ 中ほど】 浦島太郎は亀に乗ったが、水心がなければ危ないものだ。虎は落ちた所が馬より背が低い。 【左ページ 右下】 なるほど、もっともでございます。

英語訳

【Right page】 Takehachi, finding his own judgment inadequate, explained the entire situation to the head priest of his family temple. The priest said, "It would be best to ride on the tiger. I have never heard of any sage or hermit who loved tigers and rode them. The Zen master Budai liked to lean against tigers as if they were kotatsu and sleep with them, and Zhong Kui rode on tigers..." 【Left page】 "...and walked around. So that you don't think this is a lie, I'll show you a painting by Sesshū of Zhong Kui riding a tiger. It doesn't seem impossible to ride one. Manjusri rides on a lion, and Samantabhadra rides on an elephant," he explained with a knowing look. However, it appears that Nitta no Shirō riding a wild boar happened later than this time. 【Right page, middle】 Urashima Tarō rode on a turtle, but without knowledge of water, it would be dangerous. If a tiger falls, the ground is closer than with a horse since tigers are shorter. 【Left page, bottom right】 Indeed, that makes perfect sense.