翻刻
はかりやわか心もさまあしからむなとさへ中
将はおもひけりこの君のかうけしきはみ【何となくそれらしい様子が現れ】
ありき給をまさにさては【それではこのまま】すくし給ひて
むや【過ぎるとは思われない】となまねたう【ちょっと憎らしく】あやうかりけり【不安だ】そのゝ
ちこなたかなたよりふみなとやり給へし
いつれもかへり事みえす【返事が来ず】おほつかなく【不安で】
心やましき【イライラする】に◦あまりう(ひたやこもりなり)【直屋籠り=引きこもってばかりいること】たてある【嘆かわしいこと】かなさ
やうなるすまひする人 は(もう)もの思ひしりた
るけしきはかなき木くさそらのけしき
につけてもとりなしなとして心はせ
現代語訳
ばかりか、私の心も体裁が悪いだろうなどとまで中将は思ったのである。この君のこのように何となくそれらしい様子が現れていらっしゃるのを、まさにそれではこのまま過ぎ去ってしまわれるのだろうかと、少し憎らしく不安であった。その後、こちらあちらに手紙などをお送りになったが、いずれも返事が見えず、不安でいらいらするのに加えて、あまりにも引きこもってばかりいるのは嘆かわしいことだ。そのような住まいをする人は、もう物の情趣を理解している様子で、はかない草木や空の様子につけても、風流に解釈などして心遣いを
英語訳
Moreover, the Middle Captain even thought that his own heart might appear unseemly. Seeing this lady showing such subtle signs of her condition, he wondered anxiously and somewhat resentfully whether she would simply let things pass as they were. Afterward, he sent letters here and there, but none received replies, leaving him feeling uncertain and irritated. On top of this, constantly remaining in such complete seclusion was truly lamentable. A person living in such a dwelling, already showing signs of understanding life's poignancy, would find elegant interpretations even in the fleeting appearance of plants and the sky, displaying refined sensitivity