翻刻
うつくしけなれはわれもうちゑまるゝ心ちし
てわりなの【どうしようもない】人にうらみられ給ふ御よはひ【年齢】や
おもひやりすくなう御心のまゝ【思いのまま】ならむもことは
りとおもふこの御心いそきのほと【忙しい時期】すく【過ぐ】して
そ時〳〵おはしけるかのむらさきのゆかりた
つねとり給ひてそのうつくしみに心いり
給て六条わたりにたにかれまさり【いよいよ足が遠のき】給ふ
めれ【ように思われる】ましてあれたるやとはあはれそわり
なかりける【どうにもならない】所せき【気づまりな】御ものはち【恥ずかしがり】をみあらはさ
む【見極めようと】の御心もことになくてすきゆくをうち
現代語訳
美しいご様子なので、私(相談役)も思わず微笑んでしまう気持ちがして、「どうしようもないお方に恨まれてしまわれるお年頃ですね。思いやりが少なく、お心のままに振る舞われるのももっともなことと思います」。この君のお忙しい時期が過ぎてから、時々いらっしゃっていたあの紫の上のご縁者を正式にお迎えになって、その美しさに心を奪われなさって、六条あたりにさえますます足が遠のかれるように思われる。ましてや荒れ果てた邸は、ああ気の毒なことに、どうにもならない状況である。窮屈なお恥ずかしがりやの性格を見極めようというお気持ちも特になくて、時が過ぎていくのを何となく
英語訳
His beautiful appearance made me (the advisor) feel like smiling as well, and I thought, "What a hopeless age to be resented by someone! It's quite natural that he should act according to his heart's desires with little consideration for others." After this busy period of the Prince had passed, he formally welcomed that relation of Murasaki whom he had been visiting from time to time, and becoming captivated by her beauty, he seemed to visit even the Rokujō area less and less frequently. How much more so the ruined mansion—what a pitiful situation that could not be helped! Without any particular intention to test her awkward shyness, he simply let time pass by...