翻刻
はさりけりあはれさもさむきとしかないのち
なかけれはかゝるよにもあふものなりけりとて
うちなくもありこ宮おはしまししよをな
とてからし【つらい】とおもひけんかくたのみなくて
もすくるものなりけりとてとひた つ(ち)【「つ」の字に「ヒ」と書き込み有】ぬへく
ふるふもありさま〳〵に人わろき事ともを
うれへあへるをきゝ給もかたはらいたけれはた
ちのきてたゝいまおはするやうに【今来たばかりのように】て【格子を】うち
たゝき給ふそゝや【それそれ】なといひて火とりなをし
かうしはなちていれたてまつるしゝうはさい
現代語訳
はずでした。ああ、なんと寒々しい年月を生きてきたことでしょう。このような世の中でも、こうした人と巡り会うものなのですねと言って泣いてもいました。この宮がいらっしゃった頃を、なぜつらいと思ったのでしょうか。このように頼りないものでも、過ごしていけるものなのですねと言って、訪ねて来てくださることもなく、震えてもいる有様で、人聞きの悪いことばかりを嘆き合っているのを聞いていらっしゃるのも、お気の毒に思われるので、その場を離れて、今ちょうど到着したかのように格子を叩きなさいます。「それそれ」などと言って、火取りを直し、格子を上げて中にお入れ申し上げる。指図は最
英語訳
It was so. Ah, what cold and desolate years we have lived through. Even in such a world as this, one does meet such people, she said, weeping. When this prince was here, why did I think it painful? Even with such unreliable support, one can get by, she said. With no one visiting, trembling in her condition, lamenting together about nothing but shameful matters - as he listened to this, feeling pity, he withdrew from there and knocked on the lattice door as if he had just arrived. "There, there," they said, adjusting the fire brazier and raising the lattice to let him enter. The instructions were most...