日本の仏典を翻刻

コレクション: 大日本仏教全書第20巻

一 一乗義私記三巻 - 翻刻

一 一乗義私記三巻 - ページ 47

ページ: 47

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【右頁】 【枠外右上】 一八六 【但し算用数字】 【枠外右横上】 一乘義私記卷第三 【枠外右横下】 九四 【本文二段構成】 【上段】 清淨者。唯依_二此一_一。無_二第二_一。故於_二其中_一等。《割書:云云》此明_下依_二 三 無性之道理_一。密說_二 一乘_一之所以_上也。水抄云。淨道者卽 以_下-能斷_二 二障_一無漏聖道_上名_二淨道_一。《割書:云云》言_二清淨_一者。淨_レ惑 之義也。此一者卽無性之道也。言_三其中立_二 一乘_一者。水 抄云。其中 ̄トイフハ卽法華經 ̄ト勝鬘經 ̄トノ中 ̄トノ說也。言_レ立_二 一 乘_一者。卽是唯有一乘法也。《割書:云云》言_二非有情性等_一者。水抄 云。十方世界中。定性不定性。有性無性。摠合有故。言_下 非_レ無_二差別_一。所_レ言唯有_二 一乘_一。無_レ 二無_上レ 三者。是佛密意。若 不_レ ̄ルトキニハ知_二佛此密意_一。失壊【失_二-壞ヵ】三性之正道_一。不_レ能_レ往_二-趣菩 提𣵀槃_一《割書:云云》 問。凡此等文摠意如何。 答。雖_二 三乘種 性各別_一。皆同依_二此三性三無性之一道_一。修_二自乘行_一。得_二自 乘果_一。依_下唯由_二此一道_一。亦無_中第二 ̄トシテ所_レ歸之道_上。是故 密意 ̄ヲモテ說_二 一乘_一。然於_二其中_一。非_レ無_二 三乘五性差別_一。《割書:爲言》 問。章次文云。於_二定不定有性無性_一。合說_レ 一故《割書:云云》意何。 答。是結_二-成深密經說。一乘所被之機_一也。意云。依_三無性 一道 ̄ノミニシテ亦無_二第二_一故說_二 一乘_一。其無性一道理廣。通_二 三 乘五性_一故。云_二合說_一レ 一。故不_レ同_二法華_一也。《割書:爲言》 問。章𣵀 【下段】 槃亦言。一乘一道。四果聖人。皆得_レ作_レ佛。不_レ解_二我意_一《割書:云云》 意何。 答。是亦爲_レ顯_下密說_二 一乘_一之義_上。引_二𣵀槃經文_一。爲_レ 證。成_二其義_一也。水抄云。第三十五云。善男子我於_二經中_一。 告_二諸比丘_一。一乘一道一行一緣。能爲_二衆生_一作_二大寂静_一。言_二 一乘_一者。唯有_二 一乘_一無_二 二乘_一。一道者。唯有_二《割書:ト云ナリ》一乘所 行之道_一。一行者。唯有_二 一乘所行之行_一。一緣者。唯有_二 一 箇成佛因緣_一。乃至我諸弟子聞_二是說_一已。不_レ解_二我意_一。於_二 大衆中_一唱_二如_レ是言_一。須陀洹人。乃至阿羅漢。皆得_レ作_レ佛。 卽對_二有性_一。非_二無性人_一也。《割書:云云》《割書:此抄文亦非_二經具文_一。經文頗廣。故|略且引_レ釋也。可_レ得_二其意_一也。》 問。以_二此文_一如何可_レ顯_下密說_二 一乘_一之義_上。 答。彼經中佛密 意。說_レ有_二 一乘一道_一。如_レ是一乘一道。能爲_二衆生_一作_二大寂 静_一。永斷_二 一切繋縛苦因等_一。令_三 一切衆生到_二於第一道_一。 是以_二密意_一說_二 一乘_一。說_二 一切衆生皆可_一レ成_レ佛。然是唯約_下 有_二菩薩種性_一之者_上說。而如來弟子等。聞_二此說_一已。不_レ解_二 佛密意_一。唱_四言如來說_三 四果聖人皆得_二成佛_一。然其中有_二可_レ 成_レ者_一。有_二不_レ成者_一。而言_二皆可_レ成者_一。是不_レ解_二佛意_一也。故 此文能顯_下密說_二 一乘_一之義_上也。《割書:爲言》 問。彼經云。我於_二經 【左頁】 【枠外左上】 一八七【但し算用数字】 【枠外左横上】 一乘義私記卷第三 【枠外左横下】 九五 【本文二段構成】 【上段】 中_一。告_二比丘_一指_二何經_一耶。 答。以_レ義推_レ之。指_二此法華經等 說_二 一乘_一也。 問。章云。故但應_下如_二是 ̄ニ所_一レ說善_上《割書:云云》意 何。 答。是摠結_下 上所_レ釋一乘義。勝_二餘師義_一之所以_上也。 易_レ知_レ之。 問。章云。今此 ̄ハ十 ̄ノ義 ̄ヲモテ說_二於一乘_一。法華 論中。無_二此具足_一。顯揚說_二 六因_一。莊嚴論八義。說_二於一乘_一。 不_レ過_二此十_一。故不_レ敍_レ之《割書:云云》意何。 答。是結依_二攝大乘論 十因_一。釋_二 一乘義_一。更引_下餘論說_二 一乘_一之因_上。明_二其闕具_一。會_二 入攝論十因_一。【一点句点衍ヵ】中_一也。 問。且法華論中。無_二此具足_一之意 何。 答。以_二攝論十因_一。案_二法華論文_一。且云_下爲_二不定性應 化聲聞授_一レ記說_中此經_上。卽當_二攝論十因中第一第二第少分 第九因_一。無_二餘七因_一。故云_レ無_二此具足_一也。 問。法華經以_二 一乘_一爲_レ宗。何故釋_二此經_一論中。無_二具足因_一。 答。此經之 旨。明_丙爲_下引_二-攝一類不定性聲聞_一令_レ趣_中-向大乘_上說_乙 一乘_甲。 此時兼亦明_下爲_レ任_三 持旣行_二大乘行_一不定性小菩薩。欲_三退 還_二 二乘_一。及爲_レ引_二-導一類聲聞_一所_レ現應化聲聞_三爲_レ示_二授_レ 記相_一故說_二 一乘_一。無_レ有_二餘事_一。故唯有_二此四因_一。無_二餘因_一也。 攝論中。摠含_二 一切一乘因_一。故。具有_二 十因_一也。故不_二相違_一 【下段】 也。 問。若爾此經所說一乘。無_二餘七義_一歟。 答。今偏 依_二法華論_一擧_二 四因_一。非_レ謂_レ無_下以_二餘七因_一說_二 一乘_一之義_上。 豈彼二類人身中。無_二法無我解脱等義_一耶。此章中以_二 十 因_一釋_二 一乘_一。其意如_レ此也。 問。顯揚論說_二 六因_一者何。 答。彼第二十云。問。何故如來宣_二-說一乘_一。答。由_二 六因_一故。一 卽彼諸法。約_二無差別相_一說故。二約_二無分別行相_一說故。三 衆生無我及法無我平等故。四解脱平等故。謂差別求者 有事。虛妄分別。煩惱。對治。所緣法性。不_二相違_一故。五 善能變化住故。六行究竟故《割書:云云》 問。以_二此六因_一。配_二-攝 攝論十因_一如何。 答。敬云。以_レ 六望_レ 十。卽當_二 三七四五 九十_一也。《割書:云云》義准可_レ知_レ之。 問。莊嚴論說_二 八因_一者何。 答。彼第五頌云。法無我解脱。同故性別故。得_二 ̄ハ二意_一 ̄ヲ 文化 ̄ト。究竟 ̄トヲモテ說_二 一乘_一。《割書:云云》釋論云。如_レ是處々經中。以_二 此八意_一。佛說_二 一乘_一。而亦不_レ無_二 三乘_一。《割書:云云》卽攝論後八因 也。 問。彼莊嚴論頌亦云。引_二-攝諸聲聞_一。攝_二-住諸菩薩_一。 於_二此二不定_一。諸佛說_二 一乘_一。《割書:云云》此頌中亦說_二 二因_一。與_二攝 論初二因_一同故。可_レ云_三莊嚴論說_二 十因_一。而何云_二 八因_一。

現代語訳

【右頁】 清浄なる者は、ただこの一つに依るのみで、第二はない。故にその中等云々」とある。これは三無性の道理に依って、密かに一乗を説く所以を明かしたものである。水抄に「浄道とは、すなわち二障を断ずることができる無漏聖道をもって浄道と名づける」とある。「清浄」と言うのは、惑を浄める義である。この一つとは、すなわち無性の道である。「その中に一乗を立てる」と言うのは、水抄に「その中というのは、すなわち法華経と勝鬘経の中の説である。一乗を立てると言うのは、すなわちこれは唯一乗法有りということである」とある。「有情性等に非ず」と言うのは、水抄に「十方世界中に、定性不定性、有性無性を総合して有るゆえに、差別が無いのではないと言う。所謂『唯一乗のみ有り、二無く三無し』というのは、これは仏の密意である。もし仏のこの密意を知らないときには、三性の正道を失壊し、菩提涅槃に往趣することができない」とある。 問:およそこれらの文の総意はどうか。答:三乗種性が各別であっても、皆同じくこの三性三無性の一道に依って、自乗の行を修し、自乗の果を得る。ただこの一道によるのみで、また第二として帰すべき道も無いがゆえに、これゆえに密意をもって一乗を説く。しかしその中において、三乗五性の差別が無いわけではない(という意味である)。 問:章の次の文に「定不定有性無性について、合わせて一つを説く故云々」とあるが、意味は何か。答:これは深密経が説く一乗の所被の機を結成したものである。意味は、無性一道のみによって また第二も無い故に一乗を説く。その無性一道理は広く、三乗五性に通ずる故に、「合わせて一つを説く」と云う。故に法華と同じではない(という意味である)。 問:章に「涅槃もまた言う。一乗一道。四果聖人。皆仏と作ることを得。我が意を解せず云々」とあるが、 【下段】 意味は何か。答:これもまた密かに一乗を説く義を顕すために、涅槃経文を引いて証拠とし、その義を成したものである。水抄に「第三十五に『善男子よ、我経中において、諸比丘に告ぐ。一乗一道一行一縁。能く衆生のために大寂静を作す。一乗と言うのは、唯一乗のみ有りて二乗無し。一道とは、唯一乗所行の道有りということなり。一行とは、唯一乗所行の行有り。一縁とは、唯一つの成仏因縁有り。乃至我が諸弟子この説を聞き已って、我が意を解せず。大衆中において かくの如き言を唱う。須陀洹人、乃至阿羅漢、皆仏と作ることを得と。すなわち有性に対してであり、無性人ではない』とある」(この抄文もまた経の具文ではない。経文はかなり広いので、略してとりあえず釈を引いたのである。その意を得ることができよう)。 問:この文をもってどのように密かに一乗を説く義を顕すことができるか。答:彼の経中で仏が密意に、一乗一道が有ると説く。かくの如き一乘一道は、能く衆生のために大寂静を作し、一切の繋縛苦因等を永断し、一切衆生をして第一道に到らしめる。これは密意をもって一乗を説き、一切衆生皆成仏可能と説いたのである。しかしこれは唯菩薩種性を有する者について説いたのである。而して如来弟子等は、この説を聞き已って、仏の密意を解せず、如来が四果聖人皆成仏を得ると説いたと唱言する。しかしその中に成ることができる者があり、成らない者がある。而して皆成ることができると言うのは、これは仏意を解していないのである。故にこの文は能く密かに一乗を説く義を顕すのである(という意味である)。 問:彼の経に「我経中において、比丘に告ぐ」とあるが、何の経を指すのか。答:義をもって これを推せば、この法華経等が 【左頁】 一乗を説くことを指すのである。 問:章に「故にただ是の如く所説の如く善くすべし云々」とあるが、意味は何か。答:これは上に釈した一乗義が、余師の義に勝る所以を総結したものである。これを知るのは易しい。 問:章に「今この十義をもって一乗を説く。法華論中には、この具足無し。顕揚は六因を説く。荘厳論は八義。一乗を説く。この十に過ぎず。故にこれを敍べず云々」とあるが、意味は何か。答:これは摂大乗論十因に依って、一乗義を釈することを結び、更に余論が一乗を説く因を引いて、その闕具を明かし、摂論十因中に会入したものである。 問:まず法華論中に、この具足無しの意味は何か。答:摂論十因をもって、法華論文を案ずるに、まず不定性応化声聞のために授記してこの経を説くと云う。すなわち摂論十因中の第一第二第八少分第九因に当たる。余の七因は無い。故に「この具足無し」と云うのである。 問:法華経は一乗を宗とする。何故この経を釈する論中に、具足の因が無いのか。答:この経の旨は、一類の不定性声聞を引摂して大乗に趣向せしめるために一乗を説くことを明かすものである。この時兼ねてまた、既に大乗行を行じている不定性小菩薩が二乗に退還しようと欲するのを任持し、及び一類声聞を引導するために所現の応化声聞が授記の相を示すために一乗を説くことをも明かす。余事は無い。故に唯この四因のみ有って、余因は無いのである。摂論中では、総じて一切一乗因を含む。故に、十因を具有するのである。故に相違しない 【下段】 のである。 問:もしそうならば、この経所説の一乗には、余の七義が無いのか。答:今偏に法華論に依って四因を挙げるが、余の七因をもって一乗を説く義が無いと謂うのではない。どうして彼の二類の人の身中に、法無我解脱等の義が無いことがあろうか。この章中で十因をもって一乗を釈するのは、その意はこのようである。 問:顕揚論が説く六因とは何か。答:彼の第二十に「問:何故如来は一乗を宣説するのか。答:六因によるゆえに。一には、すなわち彼の諸法について、無差別相について説く故。二には、無分別行相について説く故。三には、衆生無我及び法無我が平等である故。四には、解脱が平等である故。謂ち差別を求める者に、有事、虚妄分別、煩悩、対治、所縁法性が、相違しない故。五には、善く変化に住する故。六には、行が究竟である故」とある。 問:この六因をもって、摂論十因に配摂するとどうか。答:慧敬が云う。六を十に望むれば、すなわち三・七・四・五・九・十に当たる」とある。義によって准じて これを知ることができる。 問:荘厳論が説く八因とは何か。答:彼の第五の頌に「法無我解脱、同故性別故、二意を得、教化と、究竟をもって一乗を説く云々」とある。釈論に「かくの如く処々の経中に、この八意をもって、仏は一乗を説く。而してまた三乗が無いわけでもない」とある。すなわち摂論の後八因である。 問:彼の荘厳論の頌もまた「諸声聞を引摂し、諸菩薩を摂住す。この二不定について、諸仏は一乗を説く云々」と云っている。この頌中にもまた二因を説き、摂論の初二因と同じである故に、荘厳論は十因を説くと云うことができる。而してなぜ八因と云うのか。