翻刻
やふ〳〵ととんやのてたいに
すゝめられふかかわのあさめし【すゝめられ深川の朝飯】
じぶん八まんへまいりすさきの【時分、八幡へ参り洲崎の】
へんてんかららかんじへゆき【弁天から羅漢寺へ行き】
かめいとのてんじん梅やしきは【亀戸の天神梅屋敷は】
梅のなつているところ
むめほしにしたらばいくたる【梅干しにしたら幾樽】
あろふとそんな事ばかり
いふてあきはみめくりへ来り【言ふて秋葉三囲へ来り】
こゝはきかくがあまごいの【こゝは其角が雨乞いの】
くをしたる所と聞きつたへて【句をしたる所と聞き伝へて】
やたてをいだしみめくりの【矢立を出し三囲の】
とてにてほとゝきすをきゝ【土手にてホトトギスを聞き】
はべりて〽みめぐりや
どてのうへにて
ほとゝきすと
まいがきも
ほつくも
おなし事にて
むだばかりいゝ
むかふかしへ【向こう河岸へ】
わたり
しやうしき【正直】
そばをくつて
かへる
まつに
わかれが
かへらりよか
きた〳〵〳〵
おれる【おりる?】
人か
【深川の八幡様は富岡八幡宮。東に700mくらいに洲崎弁天がある。洲崎から北東へ3kmくらいに羅漢寺があり、羅漢寺からへ1.6kmくらいに亀戸天神。そこから北西に1.8kmくらいに其角の雨乞い伝説がある三囲神社。清兵衛は三囲の土手、隅田川の向島側でホトトギスの声を聴き一句よんでから対岸へ渡る。当時ここには竹屋の渡しがあった。対岸は浅草で、待つ乳山・聖天さんがあるところ。】
【追記:「あきば」は三囲神社から800mほど離れたところにある秋葉神社のことらしい。】
【追記:正直蕎麦は十割蕎麦で有名だった浅草の蕎麦屋とのこと。】
【追記:「すきき」ではなく「すさき」で洲崎弁天・現洲崎神社のこと】
現代語訳
ようやく問屋の手代に
勧められ深川の朝飯
時分、八幡へ参り洲崎の
弁天から羅漢寺へ行き
亀戸の天神梅屋敷は
梅の実っているところ
梅干しにしたらいくつの樽に
なろうかとそんな事ばかり
言って秋葉三囲へ来て
ここは其角が雨乞いの
句をした所と聞き伝えて
矢立を出し三囲の
土手にてホトトギスを聞き
「三囲や
土手の上にて
ホトトギス」と
舞を踊るのも
俳句を作るのも
同じ事にて
無駄ばかり言い
向こう岸へ
渡り
正直
蕎麦を食って
帰る
待つ乳山に
別れが
帰らりょうか
来た来た来た
降りる
人か
英語訳
Finally urged by the wholesale merchant's clerk
for breakfast in Fukagawa
in the morning, he visits Hachiman shrine, goes from Susaki
Benten to Rakan-ji temple,
and at Kameido Tenjin's plum garden
where plums are bearing fruit,
he says nothing but such things as
"How many barrels would it make
if these were turned into pickled plums?"
Coming to Akiba and Mimeguri,
having heard the story that
this is where Kikaku
composed his rain-prayer
poem,
he takes out his writing case and listens to a cuckoo
on the embankment at Mimeguri:
"At Mimeguri
on top of the embankment
a cuckoo" -
whether dancing
or composing haiku
it's all the same thing,
just saying useless things.
He crosses to
the opposite shore,
eats honest
soba noodles
and returns.
At Matsuchiyama
will the parting one
return?
Coming, coming, coming
A person
getting off?