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コレクション: 養蚕の書

養蚕秘録 3巻. [3] - 翻刻

養蚕秘録 3巻. [3] - ページ 25

ページ: 25

翻刻

糸祝(いといは)ひといふは養蚕(こがひ)のことなく終(おへ) ぬるを賀(が)してものする事(こと)になんされば 初花(はつはな)匂(にほふ)ふ比(ころ)より桑(くわ)採(と)る営(いとなみ)に永(なが)き日(ひ) を忘(わす)れ郭公(ほとゝぎす)鳴(なく)や五月(さつき)の短夜(みじかよ)も睡(ねむり)を 忍(しの)ひでこれが起伏(おきふし)に心を尽(つく)しわらうだ かふるなど身(み)のいとまなきが まゝに若(わか)き女(をうな)といへど裳(もすそ)高(たか) く掲(かゝ)げ髪(かみ)も楚(おどろ)を束(つか)ねし 様(やう)にてすべて誰(たれ)の人ともわかれ ぬに今日(けふ)の賓客(まらうど)設(もう)けせんと 衣服(いふく)調度(てうど)など粧(よそほ)ひみやびかに ひき繕(つくろ)ひたる気(け)しきさへある に並居(なみゐ)る人々に餅(もち)高(たか)く盛(もり)て 持(もち)出たる始(はじめ)の忩(いそがは)【=怱】しかりし姿(すがた)とは 俄(にはか)に目(め)さむる心地(こゝち)なんせらる今日(けふ) まづ是をもて寿(ことぶく) 事は古(いにし)へよりの 例(あと)なりとぞやゝ盃(さかづき)とり出て 千(ち)たび百度(もゝたび)めぐる程に時(とき) 移(うつ)れど猶(なを)どよめきつゝ 夜(よ)の明(あく)るをも知(し)らで 興(きよう)じあへるは尽(つき)せぬ 宿(やど)の嘉(よろこ)びを唱(うた)ふ事 にて彼(かの)唐人(もろこしびと)の桑(くわ)を 種(うゆ)ること百 余(よ)樹(じゆ)黍(きび)を 種(うゆ)ること三十 畝(ほ)衣食(いしよく) 既(すでに)に余有(あまりあ)り時々(とき〳〵) 賓友(ひんゆう)に会(くはい)す といひけんも 斯(かゝ)る類(たぐ)ひ にやと おほし