東京学芸大学「学びと遊びの歴史」を翻刻!

コレクション: 学校教材発掘プロジェクト 6

源氏百人一首 - 翻刻

源氏百人一首 - ページ 16

ページ: 16

翻刻

【右丁】 いとかりそめに名(な)のみ出(いで)たる人々(ひと〴〵)など彼是(かれこれ)合(あは)せて半(なかば)にも過(すぎ) たりされば此類(このるい)は勿論(もちろん)にて其余(そのよ)物語中(ものがたりちう)にわざある人々(ひと〴〵)といへ ども自然(しぜん)に歌(うた)一首(いつしゆ)も詠(よま)ざる人(ひと)ありとて是等(これら)の類(るい)をのぞき 去(さり)たる上(うへ)にて人(ひと)一人(ひとり)につきて歌(うた)一首(いつしゆ)づゝを撰(えら)び出(いで)たる其(その)数(かず)百(ひやく) 廿三人(にじふさんにん)の歌(うた)になん有(あり)ける ○上(かみ)にも云(いへ)る如く其名(そのな)有(あり)て歌(うた)無(なき)人(ひと)もあれば又(また)歌(うた)有(あり)て名(な)なき 人(ひと)ありたとへば秋(あき)好(このむ)中宮(ちうぐう)の女房(にようばう)たちの詠(よめ)るとて歌(うた)三四首(さんししゆ)も 並(なら)べ出(いだ)し或(あるひ)は殿上人(てんじやうびと)と而已(のみ)有(あり)て誰(たれ)ともいはざる類(るい)也(なり)此類(このるい)も また彼是(かれこれ)あるを今(いま)は其(その)歌(うた)の詞(ことば)を取(とり)て其人(そのひと)の名(な)とし又(また)は其(その) 住処(すみか)もて名付(なづけ)などもして仮初(かりそめ)の名(な)をまうけ出(いだ)せり是(これ)作(さく) 者(しや)の心(こゝろ)にあらざればいかゞともいふべけれどさらではまじるし【目印】と 【左丁】 するよしなく且(かつ)は指喰(ゆびくひ)の女(をんな)蒜喰(ひるくひ)の女(をんな)などの類(るい)も本(もと)より作者(さくしや) の知(しら)ぬ名(な)なれども是等(これら)は物語(ものがたり)の始(はじめ)の方(かた)に出(いで)たる人々(ひと〴〵)なれば おのづから目(め)馴(なれ)口(くち)馴(なる)る人(ひと)の多(おほ)き故(ゆへ)に唯(たゞ)いつとなく然(しか)いひなれ たる名(な)なるを思(おも)ふべしされば今(いま)設(まうけ)たるも則(すなはち)此類(このるい)なればなでふ 事(こと)か有んとてなん ○総(すべ)【惣】ての書(しよ)に官位(くわんゐ)ある人(ひと)は其(その)極官(ごくくわん)を出(いだ)す事(こと)是(これ)大方(おほかた)の定(さだまり)也(なり) 然(しか)れども今(いま)は此例(このれい)にかゝはらずして六条院(ろくでうのゐん)と書(かく)べきを光源氏(ひかるげんじの) 君(きみ)とし柏木権大納言(かしはぎのごんだいなごん)と書(かく)べきを柏木右衛門督(かしはぎのゑもんのかみ)と書(かけ)る類(るい)多(おほ)し 是等(これら)は聊(いさゝか)にても広(ひろ)く世人(よのひと)の耳(みゝ)にふれたる方(かた)を出(いだ)して童子(わらはべ) におぼえ安(やす)からしめんとて也 且(かつ)歌(うた)は有(ある)に従(したが)ひて拾(ひろ)ひ入(いれ)つとは いふ物(もの)の始(はじめ)より順(じゆん)に人々(ひと〴〵)の小伝(せうでん)と歌(うた)の解(かい)とを見合(みあは)せて源氏(げんじ)

現代語訳

【右丁】 たいへん軽く名前だけが出てくる人々などを、あれこれ合わせると半数を超える。したがってこの類の人々は当然として、その他物語中で活動のある人々といっても、自然に歌を一首も詠まない人もいるので、これらの類を除き去った上で、人一人につき歌一首ずつを選び出したその数は、百二十三人の歌となった。 ○上にも述べたように、その名前はあるが歌のない人もあれば、また歌はあるが名前のない人もある。たとえば秋好中宮の女房たちが詠んだとして歌が三、四首も並べて出され、あるいは殿上人とだけあって誰とも言わない類である。この類もまたあれこれあるが、今はその歌の詞を取ってその人の名前とし、またはその住居をもって名付けなどもして、仮の名前を設けた。これは作者の本意ではないからどうかとも言えるだろうが、そうしなければ区別の 【左丁】 しようがなく、かつ指喰の女・蒜喰の女などの類も、もとより作者の知らない名前であるが、これらは物語の始めの方に出てくる人々なので、自然と目に馴染み口に馴染む人が多いために、ただいつとなくそのように呼び慣れた名前であると思うべきである。したがって今設けたのも、すなわちこの類なのでなんの問題があろうか。 ○すべての書物において官位のある人は、その最高官職を出すことがこれは一般的な決まりである。しかし今はこの例にかかわらずに、六条院と書くべきを光源氏の君とし、柏木権大納言と書くべきを柏木右衛門督と書いた類が多い。これらは少しでも広く世の人の耳に触れた方を出して、童子に覚えやすくさせようとしてのことである。かつ歌は存在するものに従って拾い入れたとはいうものの、始めから順に人々の小伝と歌の解釈とを見合わせて源氏

英語訳

【Right Page】 Including people whose names appear very casually and such, when combined, they exceed half the total. Therefore, aside from this type naturally, even among the people with activities in the tale, some naturally never compose a single poem. After excluding these types, the number of poems selected at one per person amounts to one hundred and twenty-three people's poems. ○As mentioned above, some have names but no poems, while others have poems but no names. For example, three or four poems are listed as composed by the ladies-in-waiting of Akikonomu Chūgū, or there are types identified only as "court nobles" without specifying who. There are various cases of this type as well, but now I have taken words from their poems to make their names, or named them after their residences, creating temporary names. This may not align with the author's intent, so one might question it, but otherwise there would be no way to distinguish 【Left Page】 them, and moreover, names like "Finger-biting Woman" and "Garlic-eating Woman" were not originally known names by the author either, but since these are people appearing toward the beginning of the tale, many people naturally become familiar with them through sight and sound, so one should understand they are names that have simply become customary over time. Therefore, what I have now created belongs to this same category, so what problem could there be? ○In all books, it is a general rule to give the highest official rank for people with court positions. However, now I have not followed this example, writing "Prince Genji" where "Rokujō-in" should be written, and "Kashiwagi Emon-no-kami" where "Kashiwagi Gon-dainagon" should be written—there are many such cases. This is to present the forms that have reached the ears of people in the world even slightly more widely, making them easier for children to remember. Moreover, while I say the poems were gathered according to what existed, by comparing the brief biographies of people and poem interpretations in order from the beginning, [one can understand] Genji