翻刻
【右丁】
葉をつみいてゝひと巻にえらひついてゝ
若紫のうらわかきをみな児のみならふ
ためにと其いふかし舞へきふしことにとき言
をさへしるしそへたるは心きゝていといたき
わさなりかしこはゝやう嵯峨のわたりのもゝ
くさのことの葉の世のめのわらはのもてあつ
かひくさとなれるにさしならふともさのみ
【左丁】
けたるゝ色ならしをねすり【根摺り】の衣したにのみ
ひきこめたらんは何のはえなきわさ
なめり四方の市くらにもていてゝものこ
のみの女君たちにまゐらせんにさかにくき
ふるこたち【古御達】のわりなう疵もとむるたくひも
はひおくれ【灰後れ】たりなとはゐくるへくもあらす
めてのゝしる人おほきをきくにけにかうめ【別本による】
現代語訳
【右丁】
葉を摘み出してひと巻に選び綴って、
若紫のうら若き女の子が学ぶ
ためにと、その言う甲斐ある節ごとに解き言
をさえ記し添えたのは、心利きでとても痛ましい
仕事です。賢しい母親のように、嵯峨のあたりの百
草の言の葉が、世の女の子供たちの手に取って扱う
草となっているのに比べて、同じように
【左丁】
汚れた色ならず、根摺りの衣の下にのみ
引き籠めているのは何の栄えもない仕事
でしょう。四方の市蔵にも持ち出して、物好
みの女君たちに差し上げるのに、意地悪い
古い女房たちが無理やり傷を求める類いも
遅れをとったりなどとは言うはずもなく、
褒めて騒ぐ人が多いのを聞くに違いない。このような
英語訳
【Right Page】
Plucking out the leaves and selecting them into one volume,
for young girls like Murasaki to learn from,
and adding explanatory words for each meaningful passage—
this is a thoughtful but most painstaking
task. Like a wise mother, the myriad
words and leaves of Saga have become
grass for the world's young girls to handle, and similarly
【Left Page】
if not soiled in color, keeping them confined only
beneath root-dyed garments would be work
without any glory. Taking them out to markets in all directions
and presenting them to ladies of refined taste—even
spiteful old court ladies who unreasonably seek faults
would not fall behind or say such things,
and one would surely hear many people praising and making a fuss. Such