産業史料を翻刻!

コレクション: 養蚕の書

蚕影山畧縁起 - 翻刻

蚕影山畧縁起 - ページ 3

ページ: 3

翻刻

せしに姫(ひめ)君一人おわしまし。御名を金色(こんじき)姫と申き或(ある)時御 后(きさき) れいならすして。遂(つい)にはかなくならせ給ふより。又 後后(こうぐわう)を迎(むか)ひ 給ふに。邪見(じやけん)ほういつの人にて。継母(けいぼ)の中のわりなさは。姫君を悪(にく) みゆへ后の御たくみに仍(よつ)て獅子孔(しゝく)山といふ悪獣(あくじう)おゝきしん山へ 捨(すて)られけるに。あくじうかへつて姫君をらいはいし。一ツの獅子(しゝ)来つ て。姫君を背負(せおひ)奉り。王城の大 床(ゆか)におろし去(さり)ぬ。后いよ〳〵にく みて。此度は鷹群(ようぐん)山と言る。鷲(わし)熊(くま)たかの多き山へ捨るに。此山 は四 季(き)をわかたず雪ふる山也。かゝる所に帝よりたかを打(うた)せらる べき為(ため)に強者(つはもの)をつかわさる。然(しか)るに木の根に。やさしき姫君おわし ければ。兵士おどろき狩(かり)をやめて都(みやこ)へ姫君を送(おく)り奉るに夫人 いよ〳〵悪みて。其後は遠き島へ流されぬ。彼島は海眼山(かいがんぜん)とて。木 竹 草苔(そうたい)のたぐひなし此島に住(すま)せ給ふに。或時 釣(つり)の小船 悪(あく)風 に放(はな)され此島に至?り。姫君を見奉りて舟にのせ都へ送り斯(かゝ)る由(よし) をそうもん申しければ公卿(くぎやう)大臣(おゝとみ)日ばんを相つとめけるに。又大王の御 留(る) 主(す)をうかゞひ獄(ごく)人に仰(おふせ)て金銀をとらせ清 涼殿(りやうてん)の庭(にわ)を七尺は【ほ】 らせ。むざんや姫君を生(いき)うずめになさしめ給ふ。大王くわんぎよ有(あつ)て