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コレクション: 養蚕の書

蚕影山畧縁起 - 翻刻

蚕影山畧縁起 - ページ 4

ページ: 4

翻刻

姫君を御尋有けるに誰(たれ)あつて知(しら)ざるよし申上ければ御(お)なげき一方 ならず。日を送りしに或時清涼殿の花 園(その)の庭なか光明を放て 宮中をてらし給ふ。大王あやしみ占(うらなわ)せ給ふに此地下に神人(かみひと)あり七尺 ほつて御らん有べしとそうす。公卿大臣に至る迄おどり下(おり)て忽(たちまち)に地 七尺をほりけるに底中(ていちう)に金色姫まし給ふ。御悦び限(かき)りなく。大 王の仰けるは汝(なんぢ)は世の常(つね)の人にあらず是(これ)しりながらけい母の所(わ) 為(ざ)なるべし此国に於て長くうき目を見せんより。いかなる国へも流 し捨んと思召桑の木のうつほ船を造(つく)り姫君に宝珠(ほうしゆ)を さつけ。御身には一寸八分の勢至(せいし)ぼさつを守ふくろに掛(かけ)させ給へ 汝(なんぢ)まつたく。仏神の化身なれは仏法流布の国に流れ寄て 衆生をもさいどすべしと彼舟につくりとめ。御涙と共に沖へぞ船を 出させ給へ。大王も御ぐしをおろし法皇とならせ給へ其海辺(かいへん)に桑に て高殿をいとなみおわしけるに。時の人桑原(くわはらの)院と申き去程に彼 うつほ船はそう波万里をしのぎつゝ。八重のしほ路にたゞよひて ゆられゆらるゝ身の行末多くの星霜(せいそう)を送り迎ひて此秋津 洲(しゆ) の東の日本。常陸国筑波根豊浦湊に着(つき)にけり此浦に