翻刻
【右側】
みれと《振り仮名:◦|もイ【朱】》あはぬこひといふことを 花園左大臣
《見せ消ち:よめる》
新古【朱】
人しれぬ恋に我身はしつめともみるめに《見せ消ち:う|う》くは涙なりけり
ゆかりをむつふる恋といふことを 加茂重久
《振り仮名:よめる|イニナシ【朱】》
なてしこをわか恋草のゆかりとてなつさふ露に袖そしほるゝ
心さしはへりける童の文をとりに遣したりけれは
天台座主忠尋
《振り仮名:ふみ|文踏兼【左朱】》わけて《振り仮名:かく|書如此兼【左朱】》なはかりになりにけ《見せ消ち:れ|り》もの思ふ人の宿のにはくさ
《振り仮名:◦|寄【朱】》苗代《見せ消ち:によする》恋といふこと《振り仮名:を|イナシ【朱】》人々重保か家にてよみ侍り
けるに 藤原能盛
苗代の水は心にまかすれとこひのなみたをせきあへぬかな
契夏恋といふことをよめる 加茂《見せ消ち:怊|惟イ【朱】》基
たのむるにかねてそなけくみしかよをねぬにあけぬと聞おきしかは
【欄外上部】
朗詠 人丸
夏の夜をねぬにあけぬと
いひおきし人はものをや
おもはさりけん
千載夏 按察使公通
ほとゝきす待はわひしき夏の夜を
ねぬにあけぬとたれかいひけん
【左側】
寄更衣恋といふこゝろを 覚綱法師
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けふよりやなみたの川をせきかねんひとへになりぬ袖のしからみ
祐盛法師
なつ衣おなしなみたの色なれはくちぬやかはるしるし成らん
前斎院右衛門佐
いはいつゝたちそかへつるなつ衣あ《振り仮名:か|らイ【朱】》ぬわかれの涙《振り仮名:かく|かゝイ【朱】》れと
とほき人を恋といふことを 源宗光女
よめる
たよりあらは《振り仮名:むや|はまイ【朱】》のはまくりふみゝせよはるかなるとのうらにすむとも
海路《見せ消ち:の》恋といふことをよめる 加茂実保
いかなれはみはうき舟にのりなからなみたのそこにしつむ成らん
恋催無常といふことをよめる 智経法師
後の世《見せ消ち:も|の【朱】》けふりとしらてこれをさは恋にこかるとなけくへきかは
【欄外上部】
浜臣云むや〳〵の関と
いふもあれはむやの浜
名所なるへしものに
見あたらすさて蛤
にいひよせたり
千載恋五
右近大将実房
恋わふるこゝろは空に
うきぬれと涙の底に
身はしつむ哉