翻刻
【右側】
まてしはしいそきなふ《振り仮名:り|け歟【朱】》そ秋の月たくひのよはも一《見せ消ち:□|夜》過にき
残きくねやに薫といふことを 平康頼
よめる
ふきくなりかれたる菊のあたりよりねやなつかしき木枯の《見せ消ち:もり|風》
大納言公通卿家十首歌中に残菊をよめる
従三位頼政
しらきくの又さけるかとおとろけは霜の下にそ色はありける
祐盛法し
白きくとみせつるしもの消ゆけはふたゝひ咲て又そうつろふ
のこりのきく人をとゝむ《見せ消ち:る》 院因幡
花にこそかへらんことはわすれしを冬のまかきの菊もありけり
潤九月九日よみ侍ける 藤原家長
我やとのまかきにうゑし白菊をふたゝひつむやことし成らん
【欄外上部】
たくひのよはは八月
十五夜をさせる也
上文霜のしたにも
むしは鳴けり
【左側】
擣衣を 参議通親
わか袖のしもはらふま《振り仮名:も|をイ【朱】》から衣うちたゆむとや人のきくらん
勝命法師
から衣してうつゝちのとく〳〵と山ひこさへもいそくなるかな
重保か家にて海辺《見せ消ち:の》擣衣といふことを人〳〵よみ
侍りけるに 覚綱法し
はしたての松ふくかせにおとろきていねのあま人衣うつなり
題しらす 前大僧正覚忠
千【朱】
ときはなる青はの山も秋くれは色こそかへねさひしかりけり
歌林苑にて《見せ消ち:勤|対》山待紅葉といふことをよめる
静暹法し
みるたひに色つきなまし山の《振り仮名:は|葉端兼【左朱】》にかゝる《振り仮名:衣|心歟【朱】》のしくれなり《振り仮名:けり|せは歟【朱】》
【欄外上部】
後拾遺秋下伊勢大輔
さよふけて衣してうつ声聞けは
いそかぬ人もねられさりけり
浜臣云八雲抄に
してはしけくうつ也
云々書紀古事記ともに垂の字
をよめりたれの当てなれは也
意通ふへし擣衣のおとの
とく〳〵とひゝくを疾々の
意にいひかけたりとおほゆ
されはこそ山彦さへもいそく
とつゝけし也
名寄丹後長明
わかめかるよさの入海
霞ぬとあまにはつけよ
いねのうら風